最終年度は、補償光学レーザー検眼鏡のoffset pinholeの系を開発し、それを用いることで、網膜表層に存在する網膜神経線維からの散乱・反射光を大幅に抑制することを可能とした。この撮影の系を確立したことによって、今まで詳細に観察できなかった網膜血管形態をこれまで以上に高解像、高コントラストで撮像することに成功した。代表的な網膜循環疾患である網膜静脈閉塞症の黄斑部を観察してみると、視力障害の主な原因となる黄斑浮腫に関与する毛細血管瘤の形態的・機能的変化を捉えることができた。具体的には、血管壁の内皮レベルの病的変化、また、毛細血管瘤の内皮面から表面にかけて器質化の進むcap structureを可視化できた。さらに、血管瘤の中を多様にうごめく血球の動態(乱流形成)が直接的に観察され、この血球動態が上記のcap formationと、さらには、蛍光眼底造影におけるleakageとの関連が示唆された。
昨年度は、高解像度のoptical coherence tomography angiographyを用いて、網膜内層に3-4層に立体的に連なる血管叢を単一の血管叢に分離し、これまで電顕などでしかわからなかった網膜細動脈-毛細血管-細静脈から成る葉状の血管単位を可視化し、それによって網膜循環疾患における網膜無灌流などの病態の解明に有用な所見を得た。成果の一部を、Invest Ophthalmol Vis Sci. 2018 Dec 3;59(15):5847-5853.で報告した。上記の最終年度に得た新たな知見については、現在、論文を執筆している。
|