研究実績の概要 |
本研究の目的は、Hippo経路エフェクターであるYAP(yes-associated protein)/TAZの脈絡膜血管形態および脈絡膜血管新生への役割を明らかにすることである。本年度は、前年度より継続して脈絡膜新生血管(CNV)に対するYAP阻害薬(ベルテポルフィン;VP)の効果の解析に取り組んだ。 C57BL/6Jマウスにレーザー照射後1週間VP腹腔内投与(100mg/kg,隔日計4回投与)または偽薬(蒸留水)投与を行い、PECAMにて染色し脈絡膜展開標本作成し脈絡膜伸新生血管(CNV)面積を合計することで体積(microm*3)を求め、両群のCNVサイズ測定を行った。ベルテポルフィン投与群では、偽薬投与群と比較し有位にCNVサイズが小さい結果であった(N=7,P=0.04)。これより、VPはYAP阻害作用により、CNV進展を抑制し得る可能性が示唆された。 次に脈絡膜血管においてVPがYAPを介してどのように作用しているかを調べるため、ヒト脈絡膜血管内皮細胞(HCEC、Celprogen USA)を用いて、細胞実験を開始し評価することとした。 まず抗YAP抗体及び抗pYAP抗体を用いてHCECの免疫染色(Topro3との共染色)を行い、既報の他の細胞と同様にHCECにおいてもYAPが主に核内に局在しpYAPが細胞質に局在することを確認した。またVP濃度(microM)を0,0.3,1,3,と振り分けて、免疫染色にてpYAPの発現を確認した。結果、いずれの濃度にも細胞数に変化は認めないが、VP濃度が高いほどpYAPは細胞全体に均一に薄くなっており、pYAPの核内以降が抑制されているとして矛盾しない結果であった。 最終的に適切なVP濃度が決定次第、1)Western blotでYAPとpYAPの蛋白発現量の変化、2)MTTアッセイ3)Migrationアッセイを行う予定である。
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