研究課題/領域番号 |
18K16928
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長谷川 英一 九州大学, 大学病院, 助教 (70636521)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ぶどう膜炎 / 自然リンパ球 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非感染性ぶどう膜炎における新規自然リンパ球であるMucosal associated invariant T (MAIT)細胞の関与を解析することである。野生型マウスにぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を誘導し、炎症極期の誘導後24日目の眼組織サンプルをフローサイトメトリーで解析したところ、ぶどう膜炎誘導後の眼内にMAIT細胞が浸潤してきていることを発見した。この細胞はCD4、CD8共に陰性の集団であった。MAIT細胞欠損遺伝子改変マウスに同様にぶどう膜炎を誘導したところ、野生型マウスと比較してぶどう膜炎の炎症が減弱傾向であった。このことからMAIT細胞は眼内でぶどう膜炎の炎症惹起に関与していることが示唆された。ぶどう膜炎においてCD4陽性T細胞が炎症惹起に中心的な役割を果たしているが、現在はこのCD4陽性T細胞に与えるMAIT細胞の影響について解析を行なっている。 MAIT細胞はMHC class Ib分子であるMR1依存性に抗原提示を受けて活性化し炎症に関与していることが分かっているが、その抗原については未だ不明な点が多い。抗原検索を目的にMR1発現レポーター抗原提示細胞とMAIT細胞αβT細胞受容体抗原認識部位とCD3ζ鎖の細胞内領域のキメラタンパク質を導入したT細胞を用いて網羅的に抗原候補を検索したところ、いくつかの候補分子が上記T細胞を活性化することを同定した。今後はこれらの分子を筆頭に眼内におけるMAIT細胞を活性化する自己抗原の検索を行なっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで野生型マウスを用いた自己免疫性ぶどう膜炎の解析は予定通り行えており、定常状態時と比較し眼内炎症発症時にMAIT細胞が眼内で増加していることから、炎症に伴いMAIT細胞が眼内に浸潤してきていることを確認出来た。このことはMAIT細胞がぶどう膜炎の病態に関与していることを示唆するものである。その機能については、ぶどう膜炎発症に重要な役割を果たすCD4陽性細胞への影響を中心に解析を行なっており、その数の増減や炎症性サイトカインの発現状況を検討しているところである。MAIT細胞の機能についてはMAIT細胞欠損マウスを用いて解析を行なっているが、MAIT細胞欠損マウスの確保が想定よりも少ない状況である。本研究では、MAIT細胞の抗原の同定も目的としており、これまでの網羅的検索により複数の新規抗原候補物質を同定出来た。これらの物質がin vitro実験でMR1依存性にMAIT細胞αβT細胞受容体に結合しT細胞を活性化することを確認している。今後はin vivoでの自己抗原物質についての検索を行なっていく。マウス実験に加えてヒトぶどう膜炎患者の前房水・硝子体液サンプルを使ってのMAIT細胞の機能解析・自己抗原検索を予定しているが、解析対象となり得る臨床サンプル数の確保が予定より進んでいない。引き続きサンプル確保を続け、解析相当数のサンプルが確保出来れば解析を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
現在マウスを用いた自己免疫性ぶどう膜炎の解析は炎症極期で行なっており、MAIT細胞の関与が示唆されるものの、その機能について炎症惹起・維持・回復のどの病態に重要なのかは不明である。今後は発症早期・極期・後期の各病期におけるMAIT細胞の増減を検討すると同時にその機能について解析を行なっていく予定である。これについては野生型マウスの検討であり、マウス確保に問題はないと思われる。MAIT細胞欠損マウスを用いた機能解析は、CD4陽性T細胞の他マクロファージや好中球など各種炎症細胞に与える影響について解析を行なっていく予定であるが、MAIT細胞欠損マウスの確保が想定よりも少ない状況で実施出来る実験が限られる。現在のところ、抗体等でMAIT細胞の機能を抑制することは難しいため引き続きマウスの確保を行いながら、可能な解析はできる限り野生型マウスで行なっていく。抗原の同定についてはin vitro実験用の細胞の確保には問題なく、in vivoの自己抗原の検索についての実験も野生型マウスのサンプルで実施可能であるため遂行には問題ないと考えている。ヒトのサンプル、特に硝子体液に関しては、ぶどう膜炎患者の中でも手術治療を受けた患者からしか採取出来ないため多数のサンプル確保は難しいが、引き続き確保を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子欠損マウスを用いた実験が予定回数行えなかったため、試薬を含む実験費用が次年度使用となった。またヒトのサンプルを用いた解析もサンプル数の問題で行えず次年度使用が生じた。次年度は野生型動物を使用して行える実験を増やす予定にしている。またヒトサンプルも集まった分だけ解析を行う予定にしている。
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