滲出型加齢黄斑変性の病態の本体は脈絡膜新生血管である。脈絡膜新生血管に対して臨床的には抗血管内皮増殖因子抗体治療が効果的であるが、無効例、治療中の線維瘢痕化、一度抑制された新生血管の再燃、継続的な治療の必要性など克服されるべき課題は多い。脈絡膜新生血管研究は、その動物モデルである実験的アルゴンレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルを用いた血管新生抑制やその誘因となる炎症の抑制のための研究が活発に行われている。一般に新生血管は解剖学的に未熟な血管であるが、その血管周囲に存在する神経支配を介した新生血管の成熟による血管外漏出減少と出血の抑制に着目した研究は報告されていない。当教室で保有している神経機能に関係するTRPV4イオンチャネルの欠失マウスを用い、レーザー誘発脈絡膜新生血管の程度と成熟に関与する因子の検討を行い、新生血管の成熟化を促すことによる滲出型加齢黄斑変性の沈静化という新たな治療戦略の確立を目指した。 本モデルで誘発される脈絡膜新生血管の大きさにばらつきが大きく、複数回の検査で統計学的手法を用いた検討がなされるが、非侵襲的に同一の新生血管に対する経時的な観察及び評価をおこなうことが理想的であり、マウス専用の光干渉断層血管撮影(optical coherence tomography angiography:OCTA)を本研究に導入した。ヒトとは異なりマウスは眼底OCTA検査をおこなう為の点眼による散瞳処置で、不可逆的な白内障をに生じやすく経時的な眼底評価は非常に困難であり、まず白内障対策もおこなった。マウス専用のコンタクトレンズの改変で白内障対策の効果を上げることができたが、眼底OCTAによる同一脈絡膜新生血管の継続的な検査判定は困難を極めた。それら課題を可能な限り克服した上で、新生血管の成熟化を促すことによる滲出型加齢黄斑変性の沈静化の課題に取り組む予定である。
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