研究実績の概要 |
今年度は本研究目標の一つである、マウスへの水素水の投与方法について研究を進めた。 網膜症は眼内での病変であるので、まずは水素水を直接眼内に注射する方法を試みた。ROPマウスの生後15日目(P15)において、片眼に生理食塩水(NS)を、もう片眼にはNSを元に作成した水素水(H2)を注入した。 P17において眼球を摘出し、網膜伸展標本を作製し、isolectin B-4により網膜血管を蛍光染色した。蛍光顕微鏡下で撮影した網膜標本には、注射時の穿孔痕がみられ、同部位に血管異常がみられた。ROPとしての血管の評価に偏りが生じると判断し、別の投与方法に変更した。すわなち、眼表面である結膜下への注射である。結膜下は眼内よりも注入量を多くできるため、各眼20μlずつ投与した。同様にP15 で投与し、P17において網膜血管を蛍光染色した。撮影した網膜血管は、網膜症の程度を示す無血管野(avascular are: AVA)と、病的新生血管の範囲(neovascular area:NVA)について画像解析ソフトを用いてピクセル数で解析した。 結果、H2投与群において、AVAはNS投与群に比べ有意に少なかった(ピクセル数±標準偏差、NS: 22,750±1,084, H2: 16,145±1,583, P<0.01)が、一方でNVAは有意に多かった(NS: 181±124.5, H2: 399±139.7, P<0.01)。無血管野が減少する点ではOIRの改善効果と判断できるが、病的血管が増えたことについては悪化とも解釈できる。そのため、さらなる検討が必要であるが、いずれにしてもマウスOIRにおいて水素投与は網膜血管新生を促進させる可能性が示唆された。
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