本邦の5つの眼科施設において、合計49例の日本人眼瞼脂腺癌患者より研究参加同意を取得した。このうち38人について、血液DNAと腫瘍DNAを抽出し、エクソームシークエンスを外部委託により実施した。取得したデータについて、mutect2を用いたパイプラインにより変異コールを行い、厳格な品質管理を実施した。公開データ(North et al. Nat Commun 2018)との統合解析を行うことで、既知の3遺伝子に加え、8例(21%)で体細胞遺伝子変異が認められる1つの新規眼瞼脂腺癌関連遺伝子を特定した。これらの結果より、本邦における眼瞼脂腺癌は、これまでに報告された遺伝子に体細胞変異を有し、主要ながん関連遺伝子は人種を超え共通することが確認された。また、38例のうち36例は過去の報告と同様に体細胞遺伝子変異数は他の悪性腫瘍と比較し少なかったが、比較的変異が多く認められた症例が2例存在した。変異的特徴(シグネチャー)の解析を試みたところ、ほとんどの症例では変異数が少ないため推定が困難であったが、変異数が多い二症例においては、それぞれ異なるシグネチャーが抽出された。 新たに同定された遺伝子について、体細胞遺伝子変異を有する患者の臨床的特徴や病理学的特徴について明らかにするために、臨床情報との統合解析を今後行う予定である。
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