研究課題/領域番号 |
18K16945
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂田 礼 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (00456138)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 緑内障 / 視野検査 / 前視野緑内障 / 構造障害 |
研究実績の概要 |
スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)では、黄斑部を測定すると定量的に微細な網膜構造変化を評価することができるが、これは緑内障の早期発見にも使用されている。黄斑部の網膜内層(GCC厚)を選択的に測定するほうが緑内障の検出力は高いとも言われている。従来の視野検査計では早期の異常をとらえることが難しい症例においても機能選択的視野計ではその異常を検出することができる。今回は、黄斑部の機能選択的視野計での網膜感度とGCC厚の関係を、従来の視野計の結果と対比させた。対象患者には、屈折測定、GCC測定、ハンフリー視野計10-2(HFA10-2)および機能選択的視野計のMATRIX10-2(Mat10-2)を施行した。日本人緑内障患者62名62眼、男性22名・女性40名、屈折は-2.5diopterであった。 GCA(全体)とHFA10-2の相関係数:r=0.174(P=0.176)、とMat10-2:r=0.175(P=0.174)であった。GCA(上)とHFA10-2:r=0.204(P=0.11)、Mat10-2:r=0.27(P=0.03)、GCA(下)とHFA10-2:r=0.19(P=0.14)、Mat10-2:r=0.13(P=0.30)であった。 GCA(上鼻側)と対応するHFA10-2およびMat10-2は、r=0.069(P=0.59)、r=0.21(P=0.10)、GCA(上側)r=0.20(P=0.11)、r=0.34(P=0.007)、GCA(上耳側)r=0.19(P=0.14)、r=0.19(P=0.14)、GCA(下鼻側)r=0.19(P=0.14)、r=0.14(P=0.29)、GCA(下側)r=0.15(P=0.23)、r=0.22(P=0.09)、GCA(下耳側)r=0.13(P=0.31)、r=-0.021(P=0.87)であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね予定通りの検査を行えているが、リクルート患者数は想定よりも少ない。測定データのクオリティを判定し、データ入力の段階に入ってきていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
検査結果を基に解析を行う時期である。ハンフリー視野計10-2プログラム、マトリックス視野計10-2プログラムで得られる網膜感度デシベル(dB)は、log値で(実測閾値)dB=10log10(1/Lambert):ハンフリー視野計、(実測閾値)dB=20log10(1/Michelson contrast):マトリックス視野計、と表すことができ、視野の感度を1/Lambertもしくは、1/Michelson contrastに換算した場合の直線回帰が良く適合するとされている。主な解析方法は、ノンパラメトリックな相関をスピアマンの順位相関係数を用いて検討する予定である。ただし中心窩ではHenle線維が外方に伸びていることにより網膜神経節細胞が視細胞の位置よりも外側に変異していることが分かっている。黄斑部の測定点を偏心させて視野との対応を考える必要があり、その偏心を解析に組み入れていくため、複雑な対応関係を考慮する必要がある。 具体的な解析項目には、患者の病期や視野障害部位に応じて場合分けを行った後、①中心網膜感度と黄斑部GCC厚の相関、②黄斑部GCC厚の測定部位を6分割し各々のセクターにおける網膜感度と黄斑部GCC厚の相関、その上で、③緑内障の病期に応じた受信者動作特性曲線を作成し、緑内障の予防医学への視野検査10-2プログラムの活用方法を構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
患者からのデータ取得のため、当初よりも使用金額が少なく収まった。次年度はデータ解析並びに論文作成のため、この費用を充てることになる予定である。
|