研究の目的:HFA30-2に基づいた半視野異常の緑内障症例において、1)中心10度以内のGCC異常判定セクター部とそれに該当する網膜感度の相関、2)半視野判定(正常or異常)に基づいたROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)を作成して、機能選択的視野計と従来の視野計(ハンフリー視野計)の感度・特異度、をそれぞれ検討した。 方法:HFA30-2に基づく半視野異常症例において、中心10度以内のGCC測定領域における異常セクター数が①1つの場合、②2つの場合、③3つの場合、とHFA10-2、Mat10-2におけるその部位に対応する網膜感度との相関(スピアマンの順位相関係数ρ)、2.HFA30-2の半視野判定(正常・異常)に基づいて、HFA10-2、Mat10-2のそれぞれの感度と特異度(ROC曲線)をそれぞれ求めた。 結果:緑内障患者65名65眼、男性26名・女性39名、平均年齢は49.8歳、屈折は-3.5diopterであった。中心10度以内のGCC測定領域における異常セクターが1~2つの場合は、GCCとその部位に対応する両視野感度に相関を認めなかったが、異常セクターが3つの場合は両視野計とも強い相関を認め、特にMat10-2では有意な相関を認めた。母数が少ないので解釈は限定的であるが、中心視野10度以内に相当する黄斑部の構造変化の検出には、異常部が多くなるほど視野感度との相関がはっきり表れ、その検出にはMat10-2がより鋭敏である可能性が示唆された。ROC曲線からの結果から、すでに視野異常が出ている側についての感度・特異度の検討ではHFA10-2のほうがMat10-2よりも鋭敏と考えられ、視野の早期異常は、機能選択的視野計を用いなくても従来からの視野計で十分にとらえることができると考えられた。
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