研究課題/領域番号 |
18K16946
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 麗子 (山岸麗子) 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (80704642)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | メカノセンサー / 眼圧 / 緑内障 / 線維柱帯細胞 |
研究実績の概要 |
これまで行ってきた、ヒト線維柱帯細胞(HTM)を用いた検討に加えて、マウスを用いて眼圧に対する検討を開始した。今回、ともに12週齢のTRPV4遺伝子ノックアウト(KO)マウスと野生型マウス(WT)の眼圧とを比較した結果、WTに比べてTRPV4 KOでは有意に高値を示した。また、WTにTRPV4 agonistを腹腔内投与し眼圧を測定した結果、agonist投与により有意に眼圧が低値を示すことが明らかになった。さらに、眼圧を制御する房水流出量についても併せて検討した結果、TRPV4 KOマウスの房水流出量はWTに比べて低下していることもわかった。これらのことから、TRPV4の作用は房水流出量を増大させることにより、眼圧を低く保つ作用を有する可能性が考えられた。このことは、これまでの検討で明らかにしてきた、TRPV4刺激によりPGE2が産生されること、が関与して眼圧を低下させる可能性が示唆された。 さらにTRPV4とPiezo1の相互関係について、Ca imaging法にて各種agonistを用いて検討を行った。その結果、Piezo1をKDさせたHTMのCa流入は、Piezo1 agonist処置に対しては認められなかったものの、TRPV4 agonistではCa流入が認められた。一方TRPV4をKDしたHTMではPiezo1 およびTRPV4 agonist処置時、いずれのagonist処置においてもCa流入は認められなかった。このことから、Piezo1とPiezo1の間に何らかの相互作用があることが明らかになった。また、その作用はPiezo1の刺激がTRPV4の作用を誘発させる可能性が高いと考えている。TRPV4とPiezo1の相互作用については、今後も検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス眼圧におけるTRPV4の働きの関与を明らかにすることができた。より一層理解を深めるために、高眼圧モデルマウスを用いてTRPV4の局在や遺伝子発現(あるいはタンパク発現)について検討する必要があると考えている。現段階では高眼圧モデルマウスの作製中で、継続的に高眼圧を維持するようなモデルを目標に検討を進めている最中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは伸展刺激中心に検討を行ってきたが、緑内障の病態に深く関わる眼圧にも注目し、圧力負荷を与えた実験系で検討していくことを予定している。伸展刺激だけでなく、圧力を負荷することで緑内障発症あるいは病態進行にメカノセンサーがどのように関与していくか、を併せて検討していくことで、より新たな緑内障治療に結びつけることができると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の流行のため、人件費や旅費の出費が減り、また購入予定である物品についても納期未定となっているため、今年度の利用が減っていることが原因と考えられる。次年度は徐々に流通の回復が見込めるとのことで、新たに試薬や抗体を購入する予定でいるため、来年度利用予定額より超過した額の利用が見込まれる。
|