初代ヒト線維柱帯細胞(HTM)を用いて、real -time PCR法にて発現が確認されたPiezo1およびTRPV4に対し、それぞれsiRNA処理をした結果、Piezo1およびTRPV4共に、siRNA処理で30-40%程度までmRNAレベルが有意に低下し、Piezo1およびTRPV4遺伝子をKnock down(KD)(PIEZO1 およびTRPV4 KD)されていた。また、それらの細胞を用いて[Ca2+]i上昇を検討した結果、細胞内[Ca2+]上昇は、Piezo1およびTRPV4 KDで有意に減少しており、機能的にもKDされていた。 加えて、伸展刺激に対する作用について討した結果、30%伸展刺激によって生じる[Ca2+]i上昇が、Piezo1およびTRPV4 KDで抑制されていた。つまり、伸展刺激による[Ca2+]流入にはPiezo1およびTRPV4をそれぞれ介していることが明らかになった。さらに、脂質メディエーターの一斉定量解析結果、伸展刺激および各agonistであるYoda1およびGSK1016790a処置によりアラキドン酸、PGE2が有意に増加し、その増加はPiezo1およびTRPV4 KDでは認められなかった。 さらに、12週齢マウスを用いて眼圧に対する検討の結果、TRPV4遺伝子ノックアウト(KO)マウスと野生型マウス(WT)の眼圧は、WTに比べてTRPV4 KOでは有意に高値を示した。また、WTにTRPV4 agonistを腹腔内投与することで、有意に眼圧が低値を示すことが明らかになった。また、房水流出量はTRPV4KOマウスの房水流出量がWTに比べて低下していることもわかった。このことは、in vitro試験で得られたTRPV4刺激により産生されたPGE2が関与して眼圧を低下させる可能性が示唆された。
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