研究課題/領域番号 |
18K16947
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮井 尊史 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40599007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Fuchs角膜内皮変性症 / トリプレットリピート / CRISPR/Cas9 / 全ゲノムシーケンス / RNAseq |
研究実績の概要 |
Fuchs角膜内皮変性症の主要な変異であるTCF4intron2のCTGリピートを挟む様なguideRNAを持つCRISPR/Cas9とGFPを発現するpX458プラスミドを作成した。不死化角膜内皮細胞株HCEnCにトランスフェクションし、6時間、24時間、48時間のトランスフェクション効率を検討したところ、48時間が22.97%と最も効率が高いことがわかった。2週間の培養後、FACSでsingle cell sortingを行い、培養できたコロニーからDNAを採取し、アガロースゲル電気泳動を行い、各バンドを切り出してSanger sequenceを行ったところ、トランスフェクション細胞ではCTGリピートが見られず、リピート切除の成功を確認できた。この結果を2019年4月の日本眼科学会(東京)及び5月のAssociation for Research in Vision and Ophthalmology(バンクーバー)で発表を行う。ゲノム編集の細胞増殖曲線及び、TCF4の発現に与える影響、Off-target候補の配列に対してのPrimerを作成して、T7E1endonuclease cleavage assayに着手、検討を現在行っている。また、80CTGリピートを持つドナーDNAを作成、精製し現在Knock-in実験を行っているところでもある。 また先進ゲノム支援に採択され、Fuchs角膜内皮変性症の患者血液からのDNAの全ゲノムシークエンスによる原因となる変異の探索についてシークエンス及び解析角膜移植時採取した検体及び研究用正常ヒト角膜内皮から抽出したRNA、及びHCEnCとCRISPR/Cas9でリピート切断した細胞のRNAについてのRNAseqについての支援を受ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年計画の1年目としては、不死化角膜内皮細胞株に対して、リピートの切断実験が成功し、ノックイン実験の準備、細胞増殖曲線の比較研究、T7E1 endonuclease cleavage assayも順調に進んでいる。また、TCF4のリピートを持つ角膜内皮細胞株を同志社大学よりMTAで入手するメドがたっていることより今後さらなる研究の進展が予想される。 更に、先進ゲノム支援に採択され、Fuchs角膜内皮変性症患者の角膜移植時の検体のRNAseqや、患者血液からの全ゲノムシーケンスについて、9月に当院倫理委員会での承認をうけて、検体採取を開始し、DNA検体24検体、RNA検体疾患3検体、正常6検体を集めることができ、解析を依頼している状況であり、初年度の研究の進展状況としては十分と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在準備している80CTGリピートを持つドナーDNAのCRISPR/Cas9を用いたKnock-in実験を進める。断端を工夫して、Knock-in 効率の高いHITI法を試みる予定である。Knock-in細胞、リピート切断細胞、コントロール細胞について、増殖曲線の違いの検討、RNAseqによる発現遺伝子群の比較検討、TCF4の発現解析及びSplicing variants解析、リピート伸長疾患に起こると言われる、RNA凝集のFluorescein in situ hybridizationによる検討、Repeat associated non-ATG translationによるpolyアミノ酸の検討を行い、疾患機序の解明を行う予定である。 また、Vitroの系でのリピートのknock-in手法が確立すれば、CRISPR/Cas9を用いたリピートを持つマウスの作成を行う予定である。 日本人のFuchs角膜内皮変性症の原因の変異として、TCF4のCTGリピート伸長が25%を占めると言う報告があるが、残り75%についてはいまだにわかっておらず、患者血液からのDNA解析によって、Fuchs角膜内皮変性症のTCF4のCTGリピート以外の原因の探索も行う予定である。今回先進ゲノム支援に出している検体の解析結果で、新規変異が見つかった場合はその変異についてのメカニズム解析も行う予定である。
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