申請者らは、これまでに糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病白内障、糖尿病角膜症といった糖尿病眼合併症の克服を目的とすべく、それらの病態解明および治療に関する研究に一貫して取り組んできた。 近年、申請者らは糖尿病白内障において、いくつかのエピゲノム制御薬が高血糖による水晶体の混濁を抑制することを見い出した。このことは糖尿病合併症という高血糖による眼組織の変化を、遺伝子のオン・オフを調節するエピゲノム制御により改善させ得るという革新的な概念を示していることにほかならない。糖尿病という生活習慣病の発症には遺伝因子と環境因子の両方が互いに影響しており、エピゲノムすなわち環境により影響されるDNAの塩基配列によらない遺伝子制御は、それを繋ぐ機構として注目されている。我々はその観点に着目し糖尿病眼合併症の研究を進めているが、糖尿病眼合併症におけるエピジェネティクスに関する詳細はいまだ未解明に等しい。 本研究では、糖尿病動物モデルや糖尿病患者から得られた眼組織を用いた解析により、糖尿病白内障、糖尿病角膜症、糖尿病網膜症といった糖尿病眼合併症の病態においていかなるエピジェネティック変化が生じ関与しているか、そのメカニズムの解明、またエピゲノム薬によりその異常が制御可能か検討を行っている。 まずは、糖尿病角膜症の動物モデルについて、ラットで一定の安定した進行度の角膜症モデルを作成する条件検討を行っている。
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