眼表面摩擦を解明するために、我々は眼表面の涙液を潤滑油と考え、機械工学における軸受の摩擦を応用し、眼表面の摩擦係数は涙の粘度、瞬目の速度、眼瞼圧に関係していると推定して、これらのパラメータを測定する眼表面摩擦係数測定機と測定データを整理する計算プログラムを開発に取り組んでいる。前年度では、我々は眼表面摩擦係数測定機2号機(Ocular surface tribometer)を用いて正常被験者の角膜中央と耳側結膜の測定を行った。その結果を元に、摩擦特性曲線を作成するのに必要なパラメータを、粒子群最適化法を用いた計算プログラムと遺伝的アルゴリズムを用いた計算プログラムで解析した。粒子群最適化法と遺伝的アルゴリズムは、無数の解の組み合わせから最適解を導き出す手法であり、これらの二つの計算プログラムを比較し、より適した結果を計算できるようにプログラムの調整を行った。また、これらの二つの計算プログラムを同時に行えるようにしたことで、以前より短時間に解析が行えるようになった。今年度はドライアイ患者、特にコンタクトレンズ装用者のドライアイと摩擦の関連を調べるため、コンタクトレンズ装用者で摩擦測定を行った。2週間使い捨てシリコーンハイドロゲルCLの10分装用後と2週間装用後の摩擦係数を、Ocular surface tribometer を用いてCLを装着した状態で10回ずつ測定した。また比較のため未使用状態のCLについても固定具を用いて10回ずつ測定を行った。CL表面の摩擦係数は、装用2週間後のCL表面の摩擦係数は有意に増加しており、涙液中のタンパクや脂質の汚れ、表面の摩耗などの影響が考えられ、コンタクトレンズ関連のドライアイの一因となっていると思われた。
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