眼表面摩擦を解明するために、機械工学における軸受け摩擦の理論を応用し、眼表面の摩擦係数は涙の粘度、瞬目の速度、眼瞼圧によって規定されると推定して、これらのパラメータを測定できる眼表面摩擦測定機(Ocular surface tribometer)と測定データを分析する計算プログラムの開発を行った。 初年度は正常被験者の角膜と結膜の測定を行い、その結果を元に摩擦特性曲線を作成して潤滑状態を評価するために、粒子群最適化法と遺伝的アルゴリズムを用いた2つのプログラムを開発した。その結果、眼表面の状態を3つの潤滑パターン(混合潤滑、流体潤滑、その中間)に分類できることを明らかにした。 2年目はドライアイ患者、特にコンタクトレンズ装用者のドライアイ症状と摩擦の関連を調べるため、装用前と装用後のコンタクトレンズおよび眼表面の摩擦を測定した。装用2週後ではコンタクトレンズ表面の摩擦係数が装用前や装用10分後に比べ有意に増加しており、涙液中のタンパクや脂質の汚れ、コンタクトレンズの摩耗が影響していることが示唆された。 3年目はドライアイ患者と正常者の比較を行ったが、Covid19の影響で被験者を集めてのデータ収集が難しく、測定結果の再現性や測定者間の誤差を改善するため、測定機の自動化に取り組んだ。 最終年度では、引き続き測定機の改良と結果の解析プログラムの改良を行った。これまでの検討から、プローブの移動速度と接触圧を一定にできれば、同一条件での測定が可能になり、摩擦係数で各個人の摩擦状態を比較できる可能性があるため、接触圧の安定化と自動的に一定の速度でプローブを動かせるよう改良を行った。また、より侵襲の少ないプローブ先端の材質を検討した。解析プログラムと測定機が連動し、測定値が自動的に解析プログラムに反映できるよう改良を行った。
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