研究課題
「ヒト角膜内皮細胞(HCECs)分化における環境適応戦略としての代謝リプログラミングの階層性の解明」なる課題を設定し、角膜内皮機能不全の細胞分子病態解明を目的とした。分化度の異なるヒト角膜内皮細胞亜集団の環境適応戦略としての代謝リプログラミングの階層性を軸に、分化機能破綻修復に繋がる創薬分子標的を代謝経路に求める世界初の試みであった。培養角膜内皮細胞に存在する相転移細胞亜集団をモデル対象とし、エネルギー代謝の階層的変動を明確にする。方法はFlux Analyzerを中心に用いて上述の亜集団に関してOCRやECARの測定や、免疫染色などにより代謝表現型を評価した。我々は細胞注入療法のための培養HCECsを安定生産するために細胞の呼吸能、特にミトコンドリア機能に視点を置いた。成熟分化細胞集団(Mature SPs)と相転移細胞亜集団(SPs with CST)では培養上清中の代表的な代謝産物濃度が大きくことなりMatureSPsでTCA cycleのmetabolic intermediatesの産生が高く、BCAA, Serの消費が亢進していた。免疫染色を用いるとSPs with CSTでは膜電位消失が斑状に認められ、細胞競合の病態増悪に関与している可能性を示唆する結果となった。次に代謝基質特異性では、Mature SPsはグルコース依存性が高く、SPs with CSTではグルタミン酸と脂肪酸の依存性が高かった。次にドナー角膜組織内の内皮細胞の呼吸能を直接測定すると、53歳の正常角膜とguttataを認めるCorneal endothelial cell decompensationを罹患した43歳の角膜ではmaximum OCRは有意に正常角膜のほうが高くなった。今回の結果からヒト角膜内皮細胞分化機能破綻修復の創薬分子標的を代謝経路に見出す知見を得た。
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Investigative Ophthalmology & Visual Science
巻: 61 ページ: 1,12
10.1167/iovs.61.2.10