角膜移植拒絶に関する機序解明や拒絶応答制御に関する基礎的研究が多数なされてきたにもかかわらず、ヒトへの応用は実現していない。ヒト臨床における移植後のアロ免疫応答を明らかにし、基礎研究実績をヒトへ、早期応用を目指すことを目的とした。 ドナー細胞を培養保存可能となった昨今、ヒトの末梢血リンパ球(PBMC)を用いたヒトIFN-γELISpotアッセイによって、ヒトでのアロ応答を経時的にin vitroで評価出来る系を立ち上げた。培養ヒト角膜内皮細胞(cHCEC)の前房内注入療法後、ヒトの末梢血リンパ球(PBMC)を用いたヒトIFN-γELISpotアッセイを用い、患者へのcHCEC移植での免疫感作についてヒトでのアロ応答を経時的にin vitroで評価検討した。cHCEC移植患者の移植前と移植2週後、ならびに健常者の末梢リンパ球(PBMC)を採取した。結果、アロPBMCに対するspot数は無刺激コントロールと比較して有意に増加していたが、アロcHCECに対 するspot数には有意差が見られなかった。cHCEC移植患者のPBMCにおいて、移植に用いたものと同じドナーcHCECに対する術前のspot 数と術後2週後のspot数には有意差が見られず、無刺激とも有意差が見られなかった。よって、cHCECはアロ免疫原性が低く、直接IFN-γ産生を誘導しない。cHCEC移植2週後でもドナー抗原に対してIFN-γを産生する免疫感作は生じておらず、 cHCEC移植ではアロ抗原感作が生じないと結論付けた。なお、液性免疫の増強効果の欠如は別報で確認済である。
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