研究課題/領域番号 |
18K16971
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松山・オジョス 武 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (50756054)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メラノプシン / 非視覚機能 / 非イメージ形成 |
研究実績の概要 |
光は地球上の生き物にとって最も重要な環境シグナルであり、我々の眼は「視る」以外にも光によってさまざまな生理応答を引き起こす。例えば、光によって瞳孔の大きさを変えることで入射光の光量を制御したり、昼夜リズムを調製したりしている。これらの眼の非視覚機能は視覚機能を支える視細胞とは別の細胞に支えられている。本研究では光受容体の分子特性から切り込みこのような非視覚機能の光応答機構に迫る。哺乳類で多くの非視覚機能に関与が示されている光受容タンパク質メラノプシンは独特の光反応特性を持っており、この反応を加味することで網膜の非視覚系への光入力を操作し、従来とは違う方法で概日リズムなどを操作することを試みた。 このような非視覚機能の操作のモデルとしてマウスを用いた。マウスは夜行性であるため、夜にたくさん行動し昼間はあまり動かない。しかし興味深いことに薄暗闇でマウスを飼育すると昼夜リズムが反転し、昼行性になる。これは視覚機能と非視覚機能系の入力比によって起こされると考えらている。メラノプシンの独特な反応特性を用いれば、薄暗闇にしなくてもマウスの行動パターンを制御することができるかもしれないと考えている。またメラノプシンの光反応だけではなく、網膜疾患を想定した網膜変性モデルマウスでも同様な実験を行い、視細胞が死んでいく網膜疾患でも視覚と非視覚の入力バランスによって行動パターンなどが影響するか検証する。 このように非イメージ形成視覚を考慮した光環境をデザインすることによって現代社会の不規則な照射環境の悪影響を軽減することができると考えている。また網膜疾患による視覚および非視覚系の入力バランスを解析することでロービションや網膜疾患のQOL向上にも貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非視覚機能の一つである昼夜リズム(概日リズム)を観察するためまずマウスの行動をモニターする実験系を立ち上げた。また光反応の特性を解析し操作するため、特異的な光波長の光源を設置した。この実験系を使い野生型および、網膜変性モデルマウスでの行動をモニターした。網膜変性モデルマウスでは生後から徐々に視覚機能を担う視細胞が死んでいくため、メラノプシン由来の反応が見やすくなるからである。また波長を変えることでそれぞれが反応する波長特性を解析した。 波長特性に関しては概ね計画通りに進んでいるが、光量特性、光パターンに関しては当初導入した光照射システムでは十分に光量や光パターンを調製することができなかったため、より精密な制御が可能な光源を導入しセットアップしている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは波長とともに、強度や照射パターンなどを変メラノプシン細胞と視細胞の反応比率を操作することを目指す。また変性マウスでのメラノプシンの寄与を確認するため網膜変性モデルマウスをメラノプシンノックアウトと掛け合わせ網膜変性+メラノプシンノックアウトマウスを作成し、このマウスでも行動パターンにおける光波長や光量、光パターンに対する応答を測定する。行動パターンと並行してメラノプシン細胞の免疫組織学的な解析も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予算よりも安く光源を購入することができたので、設置に予定していた額よりも多少節約することができた。この分は次年度以降に追加の光源を設置する予定である。
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