メラノプシンは「非イメージ形成視覚」の光受容体として注目されている。概日リズムの光同調や瞳孔反射などの非イメージ形成視覚は視覚とは独立した光受容システムを持っており、新規の光の生理応答が示されていいる。また一方では光の「質」および「リズム」などが太陽光とは大幅にかけ離れている現代社会における光の意図せざる健康面への影響も懸念されている。例えば、眼は視覚以外にも概日リズムの光同調などに光情報を用いることが知られている。このような光信号は メラノプシン細胞(網膜神経節細胞の一部)と呼ばれる視覚を担う従来の視細胞のとは別の細胞によって伝えられ、視覚系からの光入力に加え独自に光反応する事もできる。この光反応を担う光 受容タンパク質は視覚系で機能するものと類似するオプシンタンパク質であるが、独自の光反応特性を持っている。本研究ではこのメラノプシン細胞の光反応特性を用いて非視覚応答へ介入できるか検証している。そのため野生型のマウスやメラノプシンKOマウスを用いて様々な光条件下でその行動をモニターした。 先報により、光条件を変える事で野生型のマウスやメラノプシンKOマウスを夜行性から昼行性へ帰ることができると報告されている。しかし先報では光強度のみ が考慮されており、その波長分布は加味されていなかったため、前年度までに先報の再現性を確認すると同時にどのような波長応答特性があるか検討した。最終年度ではメラノプ シンによってこの反応がどう制御されているか解析するため、メラノプシンKOおよび視細胞が変性する網膜変性モデルマウスでも同様な行動モニター実験を実施し、光の昼夜反転フェノタイプにおけるメラノプシンによる光入力の影響を検討した。
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