研究課題
脱毛症に対する先進医療として、細胞を用いた毛髪再生医療が注目されている。毛包由来の毛乳頭細胞を用いた基礎研究が多く行われる中、未だにヒト細胞から構成される毛包の新生は実現していない。近年、毛包を構成する真皮毛根鞘に比較的未分化な細胞が多く存在することが明らかになってきた。この真皮毛根鞘に存在する間葉系細胞である真皮毛根鞘細胞に着目し、この真皮毛根鞘細胞を毛乳頭細胞に混合することで毛包再構築能を向上させた後、その混合細胞塊を適切な方法で移植することにより、臨床応用可能な毛髪再生治療を開発することが本研究の目的である。本年度は、まず患者の同意の上で臨床検体(形成外科手術で生じた余剰皮膚に付属する毛包)を採取し、顕微鏡下で毛乳頭と毛根鞘を分離した後、毛乳頭細胞と真皮毛根鞘細胞のexplant cultureを開始した。3~4週間の培養により増幅したこれらの細胞と、事前に準備した新生児C57BL/6Jマウスの背部皮膚から単離した表皮系細胞を混合して、BALB/C nu/nuマウスにチャンバー法を用いて移植した。移植後1週間でチャンバーを除去し、移植後8週間で移植部位の皮膚を採取して、組織学的評価を行った。再生毛包数を計数し、更に再生毛包の成熟度をPausの分類法を用いて8段階のstageに分類したところ、真皮毛根鞘細胞混合群では毛乳頭細胞単独群と比較して再生毛包数が増加しており、また再生毛包の成熟度も高いことが確認された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書の予定通り、毛包由来間葉系細胞の初代培養、細胞移植実験、組織学的評価を全て行うことができた。次年度では、引き続き細胞移植形態の最適化(細胞懸濁液・細胞シート・細胞凝集塊の作製および遺伝子発現解析)を行う予定である。
実験の遂行に必要な実験機器は当研究室に既に備わっており、消耗品に関しては支給助成金の範囲内で購入可能である。研究計画書に従って研究を推進していく予定である。
消耗品調達の方法を工夫したことで、当初計画より経費の使用が節約できたため未使用額が生じた。現在研究計画書の予定通り研究を遂行できているが、次年度に計画している実験において追加実験を行う上で当該未使用分を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件)
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