研究課題/領域番号 |
18K16981
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
若槻 華子 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (20749642)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生医学 / 再建外科学 |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷後に神経移行術を行い良好な機能回復が得られたという臨床例での報告は数多く、またその中には標準術式となっているものも含まれている。一般的な神経移行術とは、損傷された神経が本来支配した筋に対し、異なる神経を切って移動し、その近位断端をもとの神経の遠位断端に縫合することにより、本来とは異なる神経からの再支配を誘導し、機能回復を図るものである。神経移行術後には、運動訓練を課すことで神経損傷により障害された機能が回復する。これは、神経回路の接続が可塑的に再編されていることを示しているが、その機構や機序については明らかにされていない。本研究では、神経回路再編の機序や再生軸索の発芽や分枝を制御する機構、神経損傷後に起こるシナプスの消退と再生後の再接続の機構などを解明する。 私はこれまでの実験で神経移行術後の遠心路の組織学的検討を行ってきた。神経縫合術、神経移行術を行った群で、手術後1週間、4週間、24週間で上腕二頭筋の神経筋接合部の再神経化の評価を行った。手術後1週間、4週間では神経移行術は神経縫合術に比して再神経化率が低かったが、24週ではどちらの群でも同等の再神経化を認めた。これに加え、求心路の観察を行うために、神経移行術後の上腕二頭筋の筋紡錘の形態変化について観察を行っている。再生期間中の前肢の機能回復の程度を評価するため、各群の手術後1日、7日、14日、21日、28日で行動実験を行った。28日で全身麻酔下に神経縫合部より近位で電気刺激を行い、神経縫合術および神経移行術後に神経回路標識で標識された前角細胞と後根神経節細胞でのc-Fos(ニューロンでの刺激に応答して一時的に発現する)の発現を観察し、神経細胞活動の確認をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経シナプス逆行性トレーサーによる神経回路の標識に遅延が生じているため
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今後の研究の推進方策 |
脊髄内での神経回路の接続の再編を観察する。神経移行術を行い28日の神経再生期間をおいたマウスを使用する。大脳皮質の前肢運動野に順行性トレーサー、左上腕二頭筋に経シナプス逆行性トレーサーを注入し、大脳皮質、脊髄の神経回路の観察を行う。さらに、免疫組織学的手法で神経回路の接続を証明し、上腕二頭筋の本来の支配髄節であるC5,6,7と移行した尺骨神経の支配髄節C8,Th1の間に介在ニューロンを介した神経回路の接続が証明できると予測している。
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次年度使用額が生じた理由 |
錐体路に蛍光が発現する遺伝子組換え動物であるthy-1 YFPマウス(Feng G. , et al. : Imaging neuronal subsets in transgenic mice expressing multiple spectral variants of GFP. Neuron ; 28(1):41-51,2000.)の使用を次年度に予定しているため。
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