前年度から引き続き、移植床安定性のためにinduced membraneの作成および腔内へのラット自家肋軟骨移植をラット前額部においた改良モデルでの実験を行った。 8週齢Wistarラットを用いて前額部右側皮下へinduced memrane作成(シリコンインプラント留置4週間)完了後、両側の第7肋軟骨を採取し、インプラントと置換してinduced membrane腔内へ移植、同時に対側(左側)へはcontrolとして皮下へ軟骨移植した。また、この移植手技に対して、軟骨側因子として軟骨膜の操作(膜維持、膜除去、膜除去後再被覆、膜維持/除去半分)の異なる4群を作成してそれぞれ実験を行った。 移植後1週間、2週間、1カ月、3カ月、6カ月においてX線CT装置を用いて撮影、3次元再構築および移植軟骨の体積を計測し追跡評価した。移植後6カ月において組織採取し、組織学的評価を行った。 X線CTの3次元再構築画像を用いた視覚的評価では、軟骨片の辺縁鈍化が進む様子が確認されたが、軟骨膜を除去して移植した群で軟骨の吸収が目立つ印象であった。一方体積計測においては、軟骨膜を有する群では測定体積値の増大傾向が見られた。体積の増大は軟骨膜を外さなかったものが、軟骨膜を一度外して再付着させたものより大きい傾向にあった。各群間におけるinduced membraneの有無においては有意な差を示すことはできなかった。 組織学的評価においては、軟骨膜除去した群で明らかに軟骨基質の希薄化を認め、再付着群においても、CD44/90両陽性組織の減少と不均一な軟骨基質減少を認めた。上記より、軟骨膜の存在および、軟骨膜剥離刺激が軟骨吸収に及ぼす影響が大きく、induced membraneの作用は軽微であると考えられた。
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