昨年度に引き続き、前外側大腿皮弁についての解剖を実施した。COVID-19の影響が強かった前年度に比べると使用できる未固定遺体の数は増加したが、密な環境を避けるために人員不足の改善には至らず、解剖を実施できたのは3回にとどまった。 3体については、それぞれ大腿回旋動脈下行枝を同定した後、その末梢で大腿筋膜に流入する穿通枝血管を同定した。穿通枝血管からMicrofilを注入し、隣接する穿通枝間に存在するperforazomeの吻合に関する検討を行った。これまでの臨床経験と合わせて、大腿筋膜流入部で1mm前後の血管口径を穿通枝血管と判定したが、穿通枝の口径は大腿中央付近と大腿近位1/3側で大きく、3体とも1mm以上の血管が複数本存在していた。最遠位の穿通枝血管の位置は個体間でバラツキがあったが、全て膝蓋骨上縁より8cm以内に存在しており、1例は最遠位の穿通枝血管口径が1mm未満であった。微量注入器を用いてこれらの穿通枝血管の途中の枝にMicrofilを注入したところ、穿通枝血管の間にある脂肪層の染色が確認された。実施できた症例数は少なかったものの、大腿中央付近の穿通枝に注入した際には、その近位にある穿通枝と遠位にある穿通枝との間で、Microfilの脂肪層の染色範囲に大きな違いを認めないことが確認できた。さらに、大腿近位の穿通枝血管に注入した際の染色は、大腿遠位の穿通枝血管に注入した場合と比較して、より大腿後方に拡がっていく傾向を認めた。 実施できた3体のうち1体は皮下脂肪が薄く、穿通枝血管へMicrofilを注入した際に皮膚の真皮下血管網も染色されることが確認された。2体は比較的脂肪が厚かったため、肉眼的に染色を確認できなかった。 今年度の検討により、前外側大腿皮弁における穿通枝間のperforazomeが確認でき、穿通枝によってその範囲が異なることもわかった。
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