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2018 年度 実施状況報告書

小口径人工血管への応用を目指した新規抗血栓性星型ポリマーコート材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K16990
研究機関九州大学

研究代表者

戸谷 匡康  九州大学, 工学研究院, 特任助教 (20773500)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード星型高分子 / 精密重合 / 高分子界面 / 水和層 / 生体適合性材料 / 血液適合性材料 / 血小板粘着抑制 / 細胞接着抑制
研究実績の概要

高密度親水性ポリエチレンオキシドアクリレート(PEO9A)鎖を修飾した星型多分岐高分子(HB-PEO9A)膜の分子鎖凝集状態が、生体適合性(バイオイナート特性)に及ぼす影響について検討した。HB-PEO9A膜表面の化学組成および形態は、以下の表面解析法により評価を行った。
X線光電子分光法によりN1SスペクトルおよびC1Sスペクトルを解析した結果、HB-PEO9A膜の最表面領域にPEO9A鎖が存在することが明らかになった。HB-PEO9A膜に対する水中気泡接触角は153°であり、参照ポリエチレンテレフタレート(PET)基板に対する接触角131°と比較して高く、親水性であることを確認した。原子間力顕微鏡によりHB-PEO9A膜の膜厚は、約1.3倍に増加したことから、HB-PEO9A膜は水による膨潤層が形成されることがわかった。
次に、HB-PEO9A膜に対しタンパク質吸着試験(アルブミン、フィブリノーゲン)、血小板粘着試験、細胞接着試験を行った。HB-PEO9A膜は、タンパク質吸着量が顕著に減少し、高いタンパク質吸着抑制能を有することがわかった。HB-PEO9A膜表面上の血小板粘着数は、PET基板表面に比べ著しく減少した。また、HB-PEO9A膜上の僅かに粘着した血小板は、その形態が変化しておらず、活性化が抑制されることがわかった。血小板粘着試験結果と同様に、HB-PEO9A膜表面は、線維芽細胞の接着細胞数が著しく減少した。
以上の結果から、PEO9A鎖を導入したHB-PEO9A膜は種々の生体成分の付着に対し高い抑制能を示すことを明らかにした。これはHB-PEO9A膜が高密度ブラシと類似した水界面の構造を有することに起因していると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本申請課題では、ポリエチレンオキシドアクリレート鎖(PEO9A)を有する星型多分岐高分子(HB-PEO9A)を精密重合法により合成した。このHB-PEO9A膜のタンパク質吸着試験、血小板粘着試験、細胞接着試験を行った結果、優れたバイオイナート特性を示すことが明らかとなった。このPEO9A鎖を導入した星型多分岐高分子は、これまでに開発してきたポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)鎖を有する星型多分岐高分子に比べ高い血小板粘着抑制、細胞接着抑制を示した。PET基板表面上において安定したHB-PEO9A膜が得られたことから被覆材料として応用可能であることが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

今後、抗血栓性星型多分岐高分子を被覆した小口径人工血管の作製を試みる。星型多分岐高分子の被覆条件および安定性試験を十分に検討し、最適な作製条件を見出す。星型多分岐高分子を被覆した小口径人工血管をラット腹部下行大動脈に移植し中長期間の開存性の評価を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Design of a star-like hyperbranched polymer having hydrophilic arms for anti-biofouling coating2019

    • 著者名/発表者名
      Totani Masayasu、Liu Ling、Matsuno Hisao、Tanaka Keiji
    • 雑誌名

      Journal of Materials Chemistry B

      巻: 7 ページ: 1045~1049

    • DOI

      10.1039/c8tb03104e

    • 査読あり
  • [学会発表] Aggregation States of Bio-inert Interface Using a Photo-Cross-Linkable Hyperbranched Polymer2019

    • 著者名/発表者名
      Ling Liu, Masayasu Totani, Hisao Matsuno, Keiji Tanaka
    • 学会等名
      第68回 高分子学会年次大会
  • [学会発表] Design of a Photo-crosslinkable Bioinert Coating Based on a Hyperbranched Polymer2019

    • 著者名/発表者名
      Ling Liu, Masayasu Totani, Hisao Matsuno, Keiji Tanaka
    • 学会等名
      第57回日本接着学会
  • [学会発表] 生体成分の接着を制御した界面の構築2019

    • 著者名/発表者名
      戸谷 匡康,Ling Liu,松野 寿生,田中 敬二
    • 学会等名
      第57回日本接着学会
  • [学会発表] 星型多分岐高分子を応用した 生体適合性界面の構築2018

    • 著者名/発表者名
      戸谷匡康、原口将幸、松野寿生、水流添暢智、田中敬二
    • 学会等名
      九州地区高分子若手研究会・夏の後援会
  • [学会発表] 星型多分岐高分子を応用した生体適合性界面の構築2018

    • 著者名/発表者名
      戸谷匡康、原口将幸、松野寿生、水流添暢智、田中敬二
    • 学会等名
      第67回高分子討論会
  • [学会発表] 防汚性コート材料のための親水性鎖を有する多分岐高分子の設計2018

    • 著者名/発表者名
      戸谷匡康、松野寿生、田中敬二
    • 学会等名
      平成30年度 九州支部高分子若手研究会
  • [学会発表] BiomertCoatingUsingaPhotocrosslinkableHyperbranchedPolymer2018

    • 著者名/発表者名
      Ling Liu, Masayasu Totani, Hisao Matsuno, Keiji Tanaka
    • 学会等名
      平成30年度 九州支部高分子若手研究会・冬の後援会

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公開日: 2019-12-27  

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