研究課題/領域番号 |
18K16994
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
美島 利昭 北里大学, 医学部, 講師 (00296477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CGRP / 神経ペプチド / リンパ管 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
痛みや炎症などの侵害刺激が加わると軸索反射を介して知覚神経から神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide, CGRP)が遊離される。CGRPはその受容体である受容体活性調節蛋白1(Receptor activity modifying protein 1, RAMP1)に作用する。申請者らはCGRPが免疫細胞のRAMP1に作用して血管新生を調節することを見いだした。本研究では知覚神経から遊離されるCGRPのリンパ管新生への作用と、その制御機構について検討した。雄性C57BL6マウス(WT)または雄性RAMP1 ノックアウトマウス(RAMP1-/-)の尻尾部に2次性リンパ浮腫を作成した。WT に比較してRAMP1-/-においてリンパ浮腫が遷延しリンパ管新生が抑制されていた。マクロファージ集積はRAMP1-/-において増強していたためリンパ管新生に関与するマクロファージが集積しているかどうかを検討したところ、炎症性マクロファージの集積がRAMP1-/-においてより増加し、修復性マクロファージの集積はWTで増加した。そこでマクロファージの表現型に差があるかどうかをin vitroで調べた。脾臓からマクロファージを分離培養してCGRPで刺激した。その結果WT に比較してRAMP1-/-において炎症性マクロファージ関連遺伝子発現が増強し、修復性マクロファージ関連遺伝子が減弱した。しかしながら、リンパ管新生増強因子であるVEGF-CならびにVEGF-DについてはRAMP1シグナルの関与はみられなかった。以上の結果から、2次性リンパ浮腫モデルではRAMP1シグナルがリンパ管新生に関与するが、これにはマクロファージが関連する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。今年度では外科手術におけるリンパ節廓清後のリンパ浮腫や放射線治療後のリンパ浮腫の病態をミミックしリンパ管新生を検討するためにマウス尻尾部に2次性リンパ浮腫を作成した。このモデルを確立し野生型マウスとRAMP1 ノックアウトマウス(RAMP1-/-)に作成してリンパ管新生におけるRAMP1シグナルの役割を検討することができた。さらにマクロファージの関与を本モデルで検証した。RAMP1シグナルがリンパ管新生因子を産生する可能性を脾臓由来マクロファージで検証した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度ではさらにマクロファージにおけるRAMP1シグナルの関与について検証する。培養脾臓マクロファージではリンパ管新生への関与を確証することが十分できたわけでないので骨髄由来の培養マクロファージを用いてリンパ管新生への関与を検討する。さらにマクロファージの形質転換にもRAMP1シグナルが関係するかどうかを検討する。また、新生リンパ管を生体イメージングで可視化してその機能的評価をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
納品時期が間に合わなかったため次年度に繰り越した。 今年度使用しなかった研究費については、一般試薬、抗体の購入に使用する。
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