研究実績の概要 |
末梢組織で痛みや炎症などの侵害刺激が加わると軸索反射を介して神経節から産生された神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide, CGRP)が知覚神経を通して別の末梢神経から遊離される。CGRPはその受容体サブユニットのひとつである受容体活性調節蛋白1(Receptor activity modifying protein 1, RAMP1)に作用する。RAMP1受容体は血管内皮細胞に発現するだけでなく、マクロファージ、リンパ球、樹状細胞などの免疫細胞にも発現して炎症を制御する。炎症時にはリンパ管が新生されて組織液の調節をしているものと考えられるが、この調節機構に内因性のCGRPが関与する可能性がある。われわれは遊離されたCGRPが免疫細胞のRAMP1に作用してリンパ管新生に関与することをマウス尻尾部における2次性リンパ浮腫モデルで見いだした。すなわち、野生型マウスと比較してRAMP1ノックアウトマウスでは尻尾のリンパ浮腫の軽減が遅延した。また尻尾部のリンパ管新生が抑制され、リンパ管新生因子VEGF-C,VEGF-Dが低下した。またリンパ管新生にはマクロファージやリンパ球(T細胞)が関与する可能性を見いだした。そこでリンパ管新生におけるマクロファージの役割を明らかにするために骨髄からマクロファージを採取して検討した。VEGF-C産生はRAMP1に依存して産生されたが、VEGF-Dは関連性がなかった。脾臓由来のT細胞を採取して調べるとRAMP1シグナルに依存してVEGF-CとVEGF-Dが産生されることを見いだした。
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