研究実績の概要 |
2次性のリンパ浮腫(上下肢浮腫)は難治性で慢性化するだけでなく、皮膚の広範な肥厚と線維化、繰り返す蜂窩織炎などのために患者のQOLは著しく損なわれる。痛みや炎症などの侵害刺激が加わるとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide, CGRP)が遊離される。CGRPはその受容体である受容体活性調節蛋白1(Receptor activity modifying protein 1, RAMP1)に作用する。 本研究ではリンパ浮腫モデルを用いて、神経ペプチドであるCGRPがリンパ浮腫に関与するかどうか、またその制御機構を明らかにすることを目的として遂行した。C57BL6マウス(WT)またはRAMP1 ノックアウトマウス(RAMP1-/-)の尻尾部に2次性リンパ浮腫を作成した。WT に比較してRAMP1-/-においてリンパ浮腫が遷延しリンパ管密度、リンパ管新生因子産生が抑制されていた。浮腫部にはマクロファージ集積がRAMP1-/-において増強し、それらは炎症性マクロファージの表現形式を示した。マクロファージを分離培養してCGRPで刺激すると、RAMP1-/-マクロファージにおいて炎症性マクロファージ関連遺伝子発現が増強し、修復性マクロファージ関連遺伝子が減弱した。またVEGF-C産生はRAMP1シグナルに依存して増加した。さらにFITC-dextranによるリンパ管造影をおこなうと、野生型マウスに比較してRAMP1ノックアウトマウスでは、リンパ管周囲への造影剤の漏出がみられ、リンパ管内皮の透過性亢進によるリンパ液の漏出と考えられ、リンパ管内皮障害が示唆された。
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