研究実績の概要 |
本研究は眼窩脂肪を含む顔面皮下脂肪と体幹部皮下脂肪の違いに関する基礎研究を行うものである。脂肪細胞に関連して脂肪由来幹細胞(Adipose derived StemCell,以下ADSC)が有名で、脂肪由来前駆細胞ともいわれている。多くは間質血管細胞群(Stromal Vascular Fraction:SVF)を継代培養してセレクションをかけることによってADCSとする必要がある。骨髄由来間葉系幹細胞などは骨髄穿刺などの患者への侵襲が大きいが、その点では脂肪細胞の採取は低侵襲であり患者の負担を少なくすることが可能である。脱分化脂肪細胞(Dedifferentiated fat cell, 以下 DFAT と記載)は 1g 程度のわずかな検体からの培養が可能で全身状態の不良な患者からも採取が可能である。成熟脂肪細胞からの直接培養が可能でセレクションが必要ない。そこで体幹部皮下脂肪と顔面皮下脂肪の違いについてDFATを用いて解明していく。 体幹部皮下から採取した脂肪細胞を採取し、ホモジネート後にコラゲナーゼを用いて酵素処理を行い、遠心分離器を用いて、成熟脂肪細胞とSVFの細胞を分離した。分離した成熟脂肪細胞はフラスコを用いた天井培養によりDFATを作製し、SVFは通常の培養を行ってADSCを作成した。同様の方法で眼窩脂肪からADSCおよびDFATの作製が可能であることを確認した。これまでに眼窩脂肪からDFATの作製の報告はなく、今回の同一条件下でDFATが作製可能であるという新たな知見を得ることができた。今後はDFATを用いることによってセレクションの必要なく単一細胞群からの基礎研究が可能となったと考える。また基礎データとして同一個体からの体幹部皮下脂肪と眼窩脂肪を採取し、マイクロアレイによる解析を行い、これらの組織の違いの探索を可能とした。
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