研究実績の概要 |
ヒト正常皮膚およびケロイドから、初代線維芽細胞を培養した。マイクロアレイ法を用いて、遺伝子発現解析とlncRNA解析を網羅的に行った (n=2)。細胞外マトリックス分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-1, 3, 7, 10が発現低下を示しており、線維化の進行に関与すると考えられた。これらのマトリックスメタロプロテアーゼが位置する染色体11q22.2付近に位置するlncRNAに絞りこんで解析を行った。正常皮膚線維芽細胞と比較して、ケロイドで発現変動の大きいlncRNAを抽出したところ、H19とLINC00900がそれぞれ23倍、7倍の発現上昇を示した。 次に、定量的RT-PCRによるマイクロアレイ結果の検証を行った(n=9)。MMPについては、MMP-1および3で、有意な発現低下が確認された。H19は有意差は認めず、LINC00900において有意な発現上昇が確認された。 次に、LINC00900全長をPCRにて増幅し、プラスミドベクターpcDNA3.1に組み込んだ。ヒト真皮由来正常線維芽細胞(NHDF)に遺伝子導入した。しかし、LINC00900の過剰発現によるMMPの発現制御は確認できなかった。 今回の研究課題で、初代ケロイド線維芽細胞(継代0)における遺伝子発現プロファイルを構築することができた。これにより、線維化に関与するlncRNA研究の発展が期待される。LINC00900の機能の特定には至っておらず、次のステップとして、KFへの遺伝子導入実験やsiRNAによる抑制実験などにより機能解析を試みる。
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