研究課題
申請者はPTH投与またはアレンドロネート投与マウスの骨細胞性骨溶解の組織学的相違を明らかにするために、それぞれのモデルマウスを作製し検索を行った。すると、PTH投与・アレンドロネート投与マウスともに骨細胞周囲の骨基質が溶解し、骨小腔が拡大することが確認できた。さらにアレンドロネート投与マウスでは、10日間連日腹腔内投与すると骨細胞だけでなく、骨芽細胞系細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)陽性反応が減弱し、透過型顕微鏡(TEM)にて詳細に観察すると、骨芽細胞自体も扁平で粗面小胞体やゴルジ装置もあまり発達していないことがわかった。加えて、骨特異的血管の数や血管腔の径の減少が認められ、TEM観察すると血管内皮細胞で形成される血管壁は肥厚し、血管内腔に向かって伸びる小突起が観察されたほか、血管内皮細胞の細胞質には、小胞や小型のミトコンドリアが局在していた。また血管内皮細胞は複雑に進展し、血管腔を形成しているのが観察された。さらに、アレンドロネートを外頸静脈から単回投与しても、投与2日後から血管の数と血管腔が減少していた。このことから、アレンドロネートは破骨細胞だけでなく、骨芽細胞や骨特異的血管にも影響を及ぼすことが示唆された。したがって、ハイドロキシアパタイトとの結合性が高いアレンドロネートは、骨小腔周囲に沈着することで長期間にわたり骨細胞の微小環境に影響を及ぼすだけでなく、骨特異的血管や骨芽細胞に影響を及ぼすことで、骨芽細胞・骨細胞で形成される骨細胞骨細管系にも影響を及ぼし、間接的・直接的に骨細胞へ不可逆的な作用を及ぼすことが強く推察された。
2: おおむね順調に進展している
申請者はこれまでに何度もPTHの外頸静脈投与、アレンドロネートの外頸静脈投与・腹腔内投与・皮下投与を行っており、安定して実験モデルマウスの作製を行うことができている。また使用薬剤であるPTH・アレンドロネートは数社の製品の中から、確実に効果のあるものを選んで使用しているため、動物実験での失敗が少なく、免疫染色に使用する抗体は、これまでに多くの実験で使用し、特異性の高い抗体を使用しているため、確実な結果が得られている。さらに試料作りに煩雑な工程と技術が必要な透過型電子顕微鏡観察は日常的に行っている観察手法であるため、研究成果を安定してあげることができている。
透過型電子顕微鏡(TEM)だけでなく、次世代顕微鏡STED(stimulated eission depletion)やSIM(structured illumination microscopy)を用いて、より微細な骨細胞・骨小腔の変化を細胞学的に解明し、さらにPTH投与後・アレンドロネート投与後の骨細胞・骨小腔の変化を安定同位体を用いた同位体顕微鏡観察や原子間力顕微鏡(AFM)によるnanoindentationにて骨細胞周囲の骨基質の物性の確認を行っていく。さらに骨細胞だけでなく、骨特異的血管や骨芽細胞といった骨細胞と関わる細胞の変化も合わせて観察を行う予定にしている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件)
Hokkaido Journal of Dental Science.
巻: 38(2) ページ: 123-130
巻: 39(1) ページ: 2-10
巻: 39(1) ページ: 22-24