申請者はPTH投与またはアレンドロネート(ALN)投与マウスの骨細胞性骨溶解の組織学的相違を明らかにするために、それぞれのモデルマウスを作製し検索を行った。すると、PTH投与マウスでは骨小腔の拡大が認められたが、コラーゲン線維など有機質の分解よりも、リン酸カルシウムの溶出が先に誘導されていた。また、PTH投与後にカルセインや安定同位体である42/44Caなどを投与してカルシウムの局在を同位体顕微鏡で観察すると、一度、骨小腔周囲のリン酸カルシウムが溶出した部位に、新たにカルシウムが沈着することが強く示唆された。このことは、骨細胞がPTHに反応して可逆的にリン酸カルシウムを溶出・沈着するものと推察された。一方、ALN投与でも同様に骨小腔の拡大が認められたが、PTH投与とは異なり、骨細胞のダメージを示唆する所見、ならびに、骨細胞ネットワークにおける細胞突起の断裂などが観察された。特に、10日間、ALNをマウスに連日腹腔内投与すると、骨細胞だけでなく骨芽細胞系細胞のアルカリフォスファターゼ活性が減弱すること、また、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察すると、骨芽細胞自体も扁平化し細胞内小器官の発達も低下していた。ALN投与中止後に経時的に観察すると破骨細胞の回復は速やかに認められたが、骨芽細胞・骨細胞ネットワークの回復には時間を要した。以上から、PTHによる骨小腔の拡大は可逆的な現象であり、PTHに対する骨細胞ネットワークの反応性を反映していると考えられた。これに対して、ALN投与による骨小腔の拡大は骨細胞だけでなく骨芽細胞系の抑制も誘導してしまい、このことは生理的ではなく不可逆的反応である可能性が強く示唆された。
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