研究課題/領域番号 |
18K17013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北浦 義昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (00816895)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨折 / ヘッジホッグシグナル / Gli1 |
研究実績の概要 |
胎生期の器官形成に重要な役割を果たすことで知られるヘッジホッグ(Hh)シグナルが、成体に於いても重要な役割を示すことを、Gli1ヘテロノックアウトマウスを作製し、詳細に調べることにより、成体の長管骨が、骨形成と骨吸収のアンカップリングを伴う骨量低下を呈することを見出してきた。さらに、成体の骨折治癒能力にも差を生じることを明らかにした。 そこで、成体の骨量維持や骨折治癒にも大きな役割を示すGli1に注目し、成体の骨折治癒を促進する治療薬としての可能性を探索することを目的として本研究を開始した。 骨折治癒促進効果を明確にするには、従来のマウスの骨折モデルではばらつきが大きく、効果の検証が困難になることを考慮し、骨折モデルの均一性、再現性を飛躍的に向上させる術式の検討を進めた。主に骨折線をシャープにする骨切り術、骨切り後の固定のための髄内釘の機械的性質を最適化することによって、従来必要とされた1条件のサンプル数の減少に成功した。 さらに、骨折モデルの個体差によるばらつきが解析に与える影響を低減するため、同一個体の治癒過程を追跡・経過観察可能なin-vivo imaging法を新たに導入すべく検討を進めた。本方法は、Caにキレート結合する材料と蛍光を発する材料を結合させた薬剤をマウスの静脈に注入することによって、新生骨の形成状態を生存状態のまま観察する手法である。本方法により、骨折部での蛍光を観察し、各個体の治癒過程のモニターとして使用可能との感触を得た。 並行して骨折部へのGli1の導入方法についても検討を進め、外因性に局所的にGli1を活性化するためのアデノウイルスベクターを作製し、局所投与条件についても最適化を進めた。 今後は、以上の知見を総合して先ずはin-vivoでの効果を検証し、さらにin-vitroでの検討により、作用メカニズムについての検討も進めていく予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は胎生期の器官形成に重要な作用を示すヘッジホッグシグナルが成体の骨量維持や骨折治癒にも寄与しているというこれまでの研究結果に基づき、成体の骨折治癒促進剤としての積極的使用が可能かどうかを探索する目的のものである。 現在までに、骨折モデルそのものを見直してばらつきの少ない術式を確立したこと。各個体の骨折治癒過程を追跡・評価できる新しいin-vivo imaging法の目途をつけたこと。さらに、局所投与活性化するアデノウイルスベクターを作製し、投与方法にも目途をつけたこと。 以上により、本研究に必要な各要素技術をほぼ揃えられたのが、現在までの進捗であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヘッジホッグシグナルの中でも特にGli1に注目し、成体の骨折治癒促進剤としての可能性を探索する本研究を推進するに於いて、必要な骨折モデル、投与方法、評価方法の各要素技術を揃えることができたため、今後は、これらの各要素技術を統合して、骨折治癒過程を詳細に調べることにより、効果の検証を進めていく。in-vivoでの効果が確認できれば、出来れば、in-vitroでの実験により、その作用メカニズムについても検討を進めていく予定。
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