研究課題
胎生期の器官形成に重要な役割を果たすヘッジホッグ(Hh)シグナルが、成体に於いても重要な役割を果たしていることを、Gli1ヘテロノックアウトマウスを作製し、詳細に調べることによって明らかにした。さらに、成体の骨折治癒能力にも差を生じることが確認されたことから、Gli1が成体の骨折治癒を促進する治療薬となる可能性を探索することを目的に、本研究を開始した。初年度は、マウスの骨折モデルの均一性、再現性を飛躍的に向上させる術式を実現した他、同一個体の治癒過程を追跡、経過観察可能なin-vivo imaginf法を新たに導入した。また、骨折部へのGli1の局所投与を可能にするアデノウイルスベクターを作製するなど、本研究に必要な各要素技術を検討、整備した。2年目は、上記各要素技術を統合して、in-vivoでの効果の確認を行った。この結果、Gli1を骨折部に局所投与することによって、骨折部仮骨の体積が増大し、骨折治癒を促進する可能性があることを確認した。一方、同一個体の骨折治癒の経過観察を目的としたin-vivo imaging法は、Caにキレート結合する材料と、蛍光を発する材料を結合させた薬剤を静脈に投与することによって、新生骨の形成を蛍光強度でモニターする方法であるが、本薬剤の代謝レベルに個体差が生じることと、骨折治癒期間中に代謝が進むことによる蛍光強度の低下が、分解能を低下させる問題も明らかになった。新型コロナウイルスの流行や装置トラブルの対応によって研究期間を延長した3年目は、in-vivo micro-CTの導入により、経過観察を実現すると共に、骨折部の詳細なCT解析により、Gli1投与マウスでは、骨折部仮骨の骨密度の高い領域での体積が有意に増大し、3点曲げ試験で機械的強度も有意に向上していることを確認した。
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International Journal of Molecular Science
巻: 21(23) ページ: 9158
10.3390/ijms21239158.