東京大学との共同研究によって、成熟した破骨細胞から分泌される小胞に骨形成能がある事が見出された(Ikebuchi et al. Nature 2018)。骨芽細胞膜上のRANKL(receptor activator of NF-κB ligand)が受容体として働き、分泌小胞上のRANKが結合すると骨形成シグナルが誘導される。一方、人工的にDNA配列から脂質二重膜に目的とする膜タンパク質を発現させる系が立ち上がっている。 本研究の目的は骨芽細胞膜上RANKLに骨形成シグナルを入れる、RANKを搭載した人工分泌小胞(エクソソーム)の創製である。 当初、リン脂質DOPCを構成材料としたエクソソームにRANK全長を組み込んだが、RANKLと結合する機能は確認できなかった。RANK全長を正しい立体構造で組み込む事が難しい為と考えた。そこで次に、細胞内ドメインを欠失させたRANK(minimal RANK)を組み込んだ。minimal RANKエクソソームの機能を確かめる為に、破骨細胞を可溶性RANKLで刺激して誘導する実験系を用いて検討した結果、濃度依存的に破骨細胞形成を抑制する事が分かった。しかし、RANKを搭載しないエクソソームもまた破骨細胞形成を抑制していた。脂質であるDOPC濃度依存的に破骨細胞形成を抑制していると考えられ、minimal RANKエクソソームでもRANKL結合能は確認できなかった。 上記結果から、構成材料としてDOPC以外の異なる脂質を用いる必要性が出てきた。また、生理的に、RANKL刺激により活性化したRANKは三量体化し、下流にシグナル伝達する事が知られている。その為、機能的なRANKL-RANK結合を誘導するには、人工エクソソーム上に三量体構造を模したRANKを発現させる工夫が必要と考える。以上2点が、今後の研究の方向性として見出された。
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