申請者は、唐辛子の辛味成分カプサイシン(CAP)が、糖類に対するマウス味覚神経応答を増強する可能性を見出した。特にこの増強は、近年発見された糖輸送体SGLT-1を介して生じること、さらに三叉神経末端のTRPV-1活性化に起因する軸索反射で分泌されたペプチドを介した味細胞への間接的な影響に起因する可能性を示唆するデータを得た。本年度は、軸索反射放出ペプチドの1つであり、腸でSGLT-1発現量の増大を生じることが報告されているアドレノメデュリン (AM)に注目し、野生型マウスに静脈内投与後、鼓索神経応答に変化が生じるかを調べた。その結果、AM投与後に単糖や蔗糖で応答の増大が認められた。人工甘味料や他の味質では応答の変化は認められず、同様の結果は甘味受容体構成分子T1R3の遺伝子欠損マウスでも得られた。さらにこれらの増強効果は、AM受容体阻害薬AM22-52前処理により消失すること、さらにSGLT-1の阻害薬であるフロリジンによっても消失することが分かった。このことから、CAPによる甘味の増強作用に、AMが関与しており、AMによるSGLT-1発現量の増大を介して甘味応答の増強が生じている可能性が予想された。さらに、qRT-PCRの結果、AM投与により鼓索神経支配領域である茸状乳頭において、SGLT-1発現量が増加する可能性を見出した。今後、qRT-PCRのn数を追加するとともに、1)AM受容体の各味細胞における発現様式、2)蛍光標識グルコース2-NBDGを用い、茸状乳頭におけるグルコース取り込み量にAMが与える影響を調べる実験等を追加し、迅速に論文発表に移る予定である。
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