申請者はこれまで、骨芽細胞に発現しているオピオイド増殖因子受容体(Opioid Growth Factor Receptor:OGFR)とそのアゴニストであるメチオニンーエンケファリン(Met-enk)に着目し研究を行なってきた。そしてこれまでにMet-enk-OGFRシグナルには、サイクリン遺存性キナーゼ阻害因子であるp21 やがん抑制遺伝子であるp53が関与し、細胞増殖を負に制御していることを明らかにしてきた。 本年度はこれらの実験結果を踏まえ、主にマウスを用いた動物実験へと発展させた。使用した薬剤は、OGFR遮断薬であるナルトレキソン(Naltrexone)である。このNaltrexoneをマウスに0.1mg/kgと1mg/kg腹腔内投与した。対照群には生理食塩水を投与した。投与期間は24日とした。投与終了後にマウス大腿骨、脛骨を採取し、マイクロCT解析、骨形態計測、骨量構造解析、遺伝子発現解析を行なった。その結果、マウスにNaltrexoneを0.1mg/kg腹腔内投与すると、対照群と比較して有意に大腿骨骨量が増加することが明らかになった。また、その骨量増加作用は骨芽細胞の増殖を介した骨形成の増加に起因することがわかった。しかし、この作用は1mg/kg投与群では生じないこともわかり、低用量のNaltrexone投与の骨量増加作用が示唆された。 以上の結果をまとめると、マウスへのNaltrexone投与は、骨芽細胞におけるMet-enk-OGFRシグナルを遮断し、骨芽細胞の増殖を介して骨量増加に寄与することが示唆された。
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