研究課題/領域番号 |
18K17023
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
金 舞 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (90625584)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 癌代謝リプログラミング / PET / イメージングバイオマーカー / 口腔癌 |
研究実績の概要 |
口腔は、摂食や発語、顔面形態形成などを担う重要な器官であり、癌が生じると重大なQOL(Quality of life:QOL)への支障を来たす。口腔癌治療では外科的治療が第一選択とされ、正常組織を含めた安全領域を設定し、切除が行われる。しかし、口腔は狭小で複雑な解剖と機能を有する特殊な領域のため、術後の形態や機能面を考慮し、可及的に正常組織を温存する必要がある。また、術前後の補助療法として放射線治療や化学療法を併用し臨床的治療効果を期待する。 PET(Positron emission tomography:PET)画像情報を含めた詳細な癌代謝病態を治療開始前に把握することは、戦略的治療計画を立案可能とし、口腔癌治療の発展的な向上に貢献する。癌細胞代謝リプログラミング機構を、近年腫瘍イメージングとして関心の高まっているアミノ酸PET製剤を用い、 PETバイオマーカーとしての有用性を評価することを本研究の目的としている。 これまでの研究では、口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、異なる二酸化炭素濃度の低酸素環境下においた癌細胞に対して、PETイメージングトレーサーを添加した培地内で培養を行った。細胞に取り込まれたPETトレーサーをシンチレーションカウンターで計測し、二酸化炭素濃度と放射能の相関について検討い、in vitroの実験内容をOral science in JAPANの第一報として報告した。本検討の結果、同様に異なる二酸化濃度の低酸素環境下においた頭頸部癌細胞株に対して、アミノ酸PETトレーサーを添加した場合、アミノ酸PETトレーサーの集積取り込みに有意な差は認めなかったが、アミノ酸トランスポーター(LAT1やxCT)の発現上昇が認められた。今後、この代謝リプログラミング構造を考察の過程として臨床症例とそのアウトカムとの関連性について検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、過去の文献から参照すると、低酸素環境下で培養した細胞株とアミノ酸PETトレーサーの集積に相関が見られると予想していたが、実験結果ではアミノ酸トランスポーターの発現上昇が確認できた一方で、アミノ酸トレーサーの集積上昇は認めなかった。 これらをフィードバックする目的で、実験を繰り返し検証したが、その他のアミノ酸PETトレーサーでも確認する必要があると考えられた。 今後、臨床研究において考察するうえでの判断材料としてin vitroの結果を考慮した病理組織学的な検討項目も追加する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本in vitroの研究結果を考察の一助として口腔癌治療への臨床研究へとフィードバックしていく予定である。病理組織標本を用いた免疫染色を行い、PET画像バイオマーカーとの関連性の解析を予定している。今後は、治療の効果を含めた総合的な臨床評価に加え、組織学的・免疫組織化学的的な検討をすることで、その病態を明らかにする。PETバイオマーカーの集積性画像を取得し、免疫染色の結果と比較することで検出能や病変内分布を明らかにする予定である。
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