研究課題/領域番号 |
18K17026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤林 えみ 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70802718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌の悪性化 / 浸潤転移 |
研究実績の概要 |
癌治療において、癌細胞の浸潤・転移および治療抵抗性の獲得による転移や再発は予後不良因子として最も難渋する問題であり、上皮間葉転換(EMT)や間葉上皮転換(以下MET)の浸潤転移への関わりや、そのEMTによって癌細胞が幹細胞性を獲得し、放射線や化学療法への抵抗性を獲得すると報告されている。我々は EMT-METを連続して誘導し、悪性度の高い癌細胞へ変異した細胞株を樹立し、EMT-METの不可逆性を示し、その連続により細胞がHippo pathwayの破綻による高い 足場非依存的な増殖能の獲得や高いSphere形成能の獲得、高い放射線・化学療法抵抗性の獲得を示したことから、この細胞の悪性化を「EMT-MET誘導性螺旋状悪性化メカニズム」として提唱している。 本研究は、この螺旋状悪性化モデルの一環として、この細胞株およびSphere形成能のみで選択回収し樹立した細胞株を比較することで、EMT-METにおけるSphere形成能および放射線・化学療法抵抗性の獲得の分子メカニズムを明らかにすることを目的としており、Sphere形成能の獲得に胚の正常発生に関連するソニックヘッジホッグシグナル伝達を制御する因子の一つであるHHAT(Hedgehog acyltransgerase)が関連している可能性についてすでに報告を行った。しかし、このHHATはEMT-MET誘導性螺旋状悪性化には関連していないことが明らかとなり、螺旋状悪性化にはHippo pathwayの破綻が重要であることが再度示されたため、Hippo pathwayの破綻メカニズムに関して、細胞培養条件等を変更しさらに詳細な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hippo pathwayの上流・下流ともにノックダウンを行ったり、阻害剤を投与したりすることで、浸潤転移およびSphere形成能にどのように影響するのか検討を行ったが、大きな影響は認めなかった。そこで細胞培養条件(pHや低栄養など)を変更し検討を行ったところ、細胞培養中に培養上澄み液中に増加する物質に影響を大きく受けることが示唆された。現在、それに関して実験を進めており、自己分泌による物質であるのか、その他の物質であるのかの検討を行っているが、調査すべき範囲が大いに拡大したため、難航している状態である。
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今後の研究の推進方策 |
EMT-MET誘導性細胞株において、細胞培養時の上澄み液に関しての解析検討を進めていく予定である。早急に実験を進め、本年度中には論文投稿を行いたいと考えているが、研究者本人の在籍が変更になったことや、COVID-19による影響等もあり、実験が行いづらい状況であることも考慮し、現時点で明らかなになったことを中心に論文を作成中であり、今年度に投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究を行っている大阪大学微生物研究所のご厚意にて、微生物研究所での実験を多く行うことができたため、予定よりも少ない経費となった。また論文投稿料に考慮した使用額申請であったが、実験の進展に伴い投稿に至らなかったため減額となった。今年度は、現時点で得たデータを中心に論文投稿を行う費用および追加実験に必要な物品購入に充てる予定である。
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