研究課題/領域番号 |
18K17027
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 真理子 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20754732)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / インフルエンザ |
研究実績の概要 |
インフルエンザによる主な死因の一つは,肺炎球菌による細菌性肺炎の合併である.ウイルスの先行感染による細菌感染への感受性亢進はこれまでに報告されてきた.しかし,重複感染の初期段階における詳細な病態形成機構は不明である.我々はA型インフルエンザウイルス (IAV) の感染による気道上皮細胞でのストレス応答性分子群の表在化が細菌の定着や重症肺炎の発症に繋がると考えた.本研究では,IAV感染気道細胞において表在化する宿主分子を探索し,二次的に感染する肺炎球菌に対する宿主レセプターとしての機能を検討した. ヒト肺胞上皮細胞株にIAV A/FM/1/47株 (H1N1) を感染させ,感染により発現量が変化する分子群を質量分析により同定した.その結果,小胞体に局在する分子シャペロンであるGP96がIAV感染に伴い,ストレスタンパクとして細胞表層へ誘導されることを確認した.また,GP96の表在化に伴い,GP96のクライエント分子であるインテグリンの表出も認めた.そこで,IAV感染細胞に肺炎球菌D39株 (2型) を感染させ,感染2時間後における菌体付着量を検討した.IAV感染細胞への菌体付着量はウイルス非感染細胞と比較して有意に増加したが,GP96阻害剤もしくはGP96抗体の添加により非感染細胞への付着量と同等レベルまで減少した. 以上の結果から,IAV感染により上皮アピカル部位に表出したGP96は,肺炎球菌の菌体表層タンパクに対する宿主レセプターとして機能することにより菌体付着を亢進させることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフルエンザウイルス感染により表在化する宿主分子としてGP96を同定し,これが二次的に感染する肺炎球菌に対する宿主レセプターとして機能することを証明できたため,おおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
IAV感染に伴い表在化するGP96と相互作用する細菌分子を検索する.IAV感染上皮細胞の細胞間接着障害に繋がるシグナルを検索し,細菌の上皮バリア突破との関連性を検証する.また,表在化GP96が細菌の定着と病態形成に及ぼす影響をマウス感染モデルで検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ウイルス-細菌重複感染マウスモデルの構築を行う予定であったが,ウイルス感染により表在化する分子の検索に時間を要したため,マウスモデルを用いた実験は次年度行うように研究計画を修正した.このため,次年度使用額が生じた.
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