研究課題/領域番号 |
18K17029
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山本 晃士 宮崎大学, 医学部, 医員 (50776953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / HAI-2 / SPINT2 / prostasin / matriptase / 腸管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
HAI(HGF activator inhibitor)は細胞膜結合型のセリンプロテアーゼインヒビターで、細胞周囲微小環境におけるセリンプロテアーゼ活性制御において重要である。本研究では、以下の成果を得た。 1. 口腔扁平上皮癌におけるHAI-2発現と機能、そして意義についての検討を行った。ヒトOSCC組織で、HAI-2は正常重層扁平上皮と比較して前癌病変や癌組織において発現が上昇していた。OSCC細胞でHAI-2は高発現しており、HAI-2を欠失させると増殖能、遊走能、浸潤能が有意に低下した。また、prostasinの発現上昇がHAI-2欠損株において見られた。 HAI-2 欠損により低下した遊走・浸潤能はprostasin発現抑制によって回復した。これらの結果は、HAI-2はOSCC発生と進展に伴い発現が亢進し、prostasinの発現を抑制することでOSCCの悪性形質獲得に関わっていると考えられた。 2. 条件付きHAI-2ノックアウトマウスを作成し、生後6週での全身組織におけるHAI-2欠失の影響を観察した。その結果、HAI-2欠損によって腸管上皮と肝外胆道系上皮に異常が出現し、腸管上皮の破綻、それによる機能障害によってマウスは短期間で致死となることが明らかになった。腸管上皮を用いたオルガノイド培養を行ったところ、HAI-2欠損の結果Epcamの分解が亢進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.多くの癌で癌抑制因子として考えられてきたHAI-2についてゲノム編集技術を用いて作成したHAI-2ノックアウトOSCC細胞を用いて詳細に解析し、OSCCにおいてHAI-2は腫瘍促進に働くことを見出した。また、この成果は論文として発表することができた。 2. 条件付きHAI-2ノックアウトマウスの作成とその解析を進め、その成果を論文として発表することができた。解析結果としては、HAI-2は腸上皮細胞において重要な機能に関わっていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウス、ノックアウト細胞株を用いてさらなる検討を行う。 1. HAI-2の発現と臨床病理学的因子との関係についてOSCC組織を用いて検討する。また、今回腫瘍抑制因子としてHAI-2が制御しているprostsinについてもOSCC組織、細胞株を用いて検討する。 2.細胞内でHAI-2が結合しているタンパクを免疫沈降法および質量分析法によって同定する。 3.条件付きHAI-2ノックアウトマウスは短期間で致死となり、頭頚部におけるHAI-2欠失の影響を見ることができなかったため、今後keratin 5-Cre transgenic miceを購入し、扁平上皮におけるHAI-2の生理的役割や発癌における役割についての検討を行う。
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