研究課題
申請者らの研究グループでは、唾液腺に脳由来神経栄養因子BDNFの過剰発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作出し、このTgマウスが血中BDNF濃度の増加を示し、抗不安作用の行動変容を起こすことを見出し論文として公表してきた。その研究過程で、このTgマウスは、網羅的メタボローム解析で下垂体に代謝の変動が大きいことが判明し、そのメカニズムと生物学的意義を検討したのが本申請研究である。これまでの検討で下垂体には、BDNFレセプターTrkbが存在し、そのリン酸化が亢進していた。また、網羅的メタボローム解析において、GABAの産生が増加し、そのメカニズムとして、グルタミン酸でカルボキシラーゼGAD1の発現が亢進していた。これは、TrKbからのシグナルと考えられた。また、下垂体においてGABAの産生増加は、過去の研究から成長ホルモンGHの産生の増加があるとの報告が認められ、Tgマウスの血中濃度をELISAで計測したところ、コントロール群と比較して有意にGHの増加を認めた。さらに、GHは、IGF-1と関連していることからIGF-1も同様にELISAで測定したところ、コントロール群と比較してIGF-1の有意な増加が認められた。さらに、IGF-1の作用は様々であるが、皮膚および口腔粘膜の増殖活性を免疫組織化学的に検索するとTgマウスは、コントロール群と比較して有意に増殖活性が高かった。以上の結果より、唾液腺BDNFは、皮膚および粘膜の増殖活性を高めターンオーバーに関連することが示唆された。
4: 遅れている
本研究で用いてるTgマウスにおいて、中性脂肪低下作用が認められるかの検討を行っているが、現在のところ十分検討が進んでいない。特に、高脂肪食による高脂血症モデルを用いて実験を行っているが、コントロール群と比較して有意な差が今のところ得られていない。そのため、当初の研究計画に遅れが生じている。
高脂血症モデルでは、中性脂肪の血液検査値が非常に高く、唾液腺BDNFの血中濃度が非常に低いため、効果が充分発揮されてないことが伺われる。そこで、高脂血症モデルを用いて、高脂血症を呈した時点で、普通食に変更し、中性脂肪の血液検査値を経時的に検討し、Tgマウスの下がり方がコントロール群と比較して有意な状態にあるかを検討する。
令和元年度の研究計画の遅れにより、再実験が必要となり、次年度使用額が生じている。令和2年度は、高脂血症モデルによる追加検索と当初の研究計画による検索を行う予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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