シェーグレン症候群(SS)は閉経期以降の女性に多発し、涙腺や唾液腺を標的として、ドライアイやドライマウスを主症状とする自己免疫疾患である。加齢に伴い細胞老化や免疫老化が起こり、女性ホルモンであるエストロゲンは減少することが知られているが、それらの現象がSS発症に関与するかは不明である。よって、本研究課題は加齢及びエストロゲン欠乏に伴う唾液腺における免疫細胞浸潤の機序を解明することを目的とする。免疫老化として老化関連T (SA-T)細胞が増加し、SA-T細胞はサイトカインやケモカインなどを産生し慢性炎症に関与することが報告されている。NF-κB2経路に変異があり、若齢でSSを発症するaly/alyマウスでSA-T細胞が増加していた。また、各マウスの唾液腺には免疫細胞が浸潤しており、CD4陽性T細胞におけるSA-T細胞の割合と細胞数が多いことが分かった。SA-T細胞が誘導されるためにはB細胞が必要であると言われており、老齢マウスの唾液腺においてはB細胞も多いことから、B細胞がSA-T細胞を誘導している可能性がある。しかし、aly/alyマウスでは唾液腺にB細胞が少ないことから、SSモデルマウスにおいては老齢マウスとは異なる機序で唾液腺にSA-T細胞が浸潤している可能性が示唆された。 老齢マウスの唾液腺では雌雄ともにSA-T細胞が浸潤しているが、雌の方が雄よりSA-T細胞が多い。雌の老齢マウスにおいて唾液腺上皮細胞ではCXCL13発現が上昇しており、CXCL13の受容体であるCXCR5がB細胞やSA-T細胞で発現している。よって、唾液腺上皮細胞の細胞老化及びエストロゲンシグナルの低下によりCXCL13発現が亢進し、唾液腺にB細胞やSA-T細胞が浸潤する可能性が示唆された。
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