研究課題
歯髄細胞におけるTRPA1の生理機能解析および発現誘導メカニズムの解析を行った。LPSにより誘導されるTRPA1発現は、NFkB阻害剤によって抑制されなかったが、一酸化窒素ドナーであるNOR5刺激によりTRPA1発現が増加したことから、LPS刺激により誘導された一酸化窒素(NO)がTRPA1発現誘導に関与することを明らかにした。NOの下流シグナル解析では、NO刺激によりp38MAPKシグナルが活性化することを明らかにした。p38MAPK阻害薬であるSB203580を添加後LPS刺激を行ったところ、LPS刺激により誘導されるTRPA1発現は抑制された。以上により、LPS刺激により誘導されるTRPA1発現にはNOにより活性化されるp38MAPKが関与していることが示唆された。TRPA1機能解析においては、TRPA1作動薬により細胞内カルシウムイオン濃度が上昇することを確認し、またTRPA1作動薬により象牙芽細胞関連遺伝子の発現上昇および石灰化結節形成の促進を認めたことからTRPA1は象牙芽細胞への分化および石灰化を亢進することが示唆された。以上の結果はThe American Journal of Pathologyに掲載された。また、炎症歯髄におけるLyve1陽性マクロファージの動態および生物学的役割についても評価した。歯髄におけるLyve1陽性マクロファージはM2-likeの組織常在性マクロファージであり、窩洞形成により炎症により一時的にその数が減少するものの、組織のリモデリングに伴って、定常時レベルまで増加することを明らかにした。さらにLyve1を強制発現されたRAW細胞においては血管新生関連遺伝子の発現が増加し、VEGFAタンパクをコントロールRAW細胞よりも有意に分泌しHUVEC細胞の管腔形成を促進した。これらの結果はScientific Reportsに掲載された。
2: おおむね順調に進展している
炎症時には歯髄細胞におけるTRPA1チャネル発現が増加すること、およびそのメカニズムの一端を明らかにした。さらにはTRPA1チャネルの活性化により象牙芽細胞関連遺伝子の発現上昇および石灰化結節形成の促進を認めた。以上のことから炎症歯髄においてはTRPA1チャネル発現の増加を介して硬組織形成に関与していることが示唆された。また歯髄におけるLyve1陽性マクロファージはM2-like組織常在性マクロファージであり、血管新生に関与することを明らかにし、これらの結果は海外学術に掲載されており、研究は順調に進展していると言える。
歯髄におけるLyve1陽性マクロファージは組織常在性マクロファージであり、血管新生以外にも障害時における歯髄組織のリモデリングに関与していると考えられる。具体的には硬組織形成誘導、および死細胞片のクリアランスを想定している。今後はこれらの機能について解析する。
研究代表者は2020年8月21日~2022年8月15日まで海外留学していたため、研究中断を行っていた。帰国後、中断再開手続きを行い研究を再開したが、研究体制を整えるに十分な期間が無かった耐えm次年度使用額が生じた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Scientific reports
巻: 12(1) ページ: 5176
10.1038/s41598-022-08987-3