エナメル蛋白質であるアメロチンはエナメル質の形成過程において、エナメル質形成後期にエナメル芽細胞から分泌される。アメロチンは石灰化を促進しつつ、自らも石灰化物の核となる性質があるとされている。本研究ではそのアメロチンをメンブレン表面に吸着させた新しいメンブレンを作成し、これを用いて、マウス頭蓋骨欠損モデルにおいて欠損部の骨治癒、骨再生にどのように影響するかin vivoで検討した。また、アメロチンの石灰化のメカニズムをin vitroで検討した。 麻酔下でマウスの頭蓋骨に3ミリメートルの骨欠損を作成し、そこに作成したメンブレンを設置し、骨欠損の治癒を経時的にマイクロCT撮影を用いて観察した。コントロールとしてアメロチンを吸着させていないメンブレンを用いた。欠損モデルにアメロチンを吸着させたメンブレンを設置すると、わずか8週で有意に骨欠損部の骨治癒が観察された。再生した骨の周りにはCD31陽性の細胞が多く観察され血管の誘導も促進していることが示唆された。 また、in vitroにおいては、マウスMC3T3-E1細胞をアメロチンを添加した骨誘導培地中で培養すると、有意に石灰化が促進していた。興味深いことに、骨関連のメッセンジャーRNA発現はSpp1遺伝子のみ有意に上昇していた。また、アメロチンはマウスMC3T3-E1細胞の細胞増殖を有意に促進していた。 このことから、アメロチンは骨の治癒に対して良好な効果を発揮し、今後の再生治療へ応用できる可能性が示唆される。これらの結果は、Annals of Biomedical Engineering誌に投稿し掲載された。
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