研究課題/領域番号 |
18K17043
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
野中 由香莉 新潟大学, 医歯学総合研究科, 日本学術振興会特別研究員 (40710520)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Cinnamaldehyde / 抗菌活性 / 歯周炎 |
研究実績の概要 |
歯周病の有病率を下げ歯の喪失を防ぐことは、国民の健康寿命の延伸につながる。しかし、薬剤耐性菌の問題から、既存の抗菌薬に代わる歯周病予防・治療薬の開発が必要とされている。これまでに、陽イオンチャネルであるTRPA1チャネルのアゴニストのひとつで、シナモンの主成分であるCinnamaldehydeが、一部の細菌に対する抗菌活性・抗炎症作用を示すことが報告されている。本研究の目的は、Cinnamaldehydeについて、歯周病原細菌に対する抗菌活性や抗炎症作用を明らかとし、新規の歯周病治療薬開発に資することである。 H30年度は研究計画に従い、代表的な歯周病原細菌であるP. gingivalis、F. nucleatum、P. intermedia、A. actinomycetemcomitansに対するCinnamaldehydeによる抗菌活性を評価した。それぞれの菌に対する最小発育阻止濃度 (MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を測定した。いずれの菌に対しても抗菌活性を認めた。また、P. gingivalis、F. nucleatumについてはin vitroにてバイオフィルムを作成し、バイオフィルム形成阻害作用および成熟バイオフィルムに対する除去効果を検討した。その結果、いずれの菌に対してもCinnamaldehydeによるバイオフィルム形成阻害作用を認めた。成熟バイオフィルム除去については、特にP. gingivalisで強くその効果を認めた。 以上より、Cinnamaldehydeは歯周病原細菌に対し強い抗菌活性を示すとともに、バイオフィルムに対しても除去効果を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って概ね予定通りに研究が進行した。口腔内において歯周病原細菌はバイオフィルムを形成し、一般にバイオフィルムは抗菌薬に対して抵抗性を示すことが報告されているため、抗菌活性の評価として浮遊細菌だけでなくバイオフィルムに対する効果も検証した。Cinnamaldehydeが、浮遊状態の菌に対する抗菌活性を有するだけでなく、形成されたバイオフィルムを破壊する作用もあることが明らかとなった。以上からCinnamaldehydeによる新規の歯周病治療薬開発につながる基礎となるデータが得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにCinnamaldehydeの歯周病原細菌に対する抗菌活性が明らかとなったことから、歯周病原細菌感染による歯周組織破壊に及ぼす影響を明らかとするため、これまでに我々の研究室で確立した歯周病モデルマウスを使用してその効果を評価する予定であり、すでに予備実験を開始している。 9週齢雄のC57BL/6マウスに絹糸リガチャーを第二臼歯に結紮し、P. gingivalis を口腔より3日毎に2回感染する。Cinnamaldehydeの口腔投与による歯周組織破壊抑制作用について検討する。評価は脱灰切片についてH-E染色を行い歯周組織破壊と炎症性細胞浸潤を評価するとともに、実体顕微鏡を用いた画像解析により歯槽骨破壊の抑制効果を評価する計画としている。
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