歯周病の有病率を下げ歯の喪失を防ぐことは、国民の健康寿命の延伸につながる。歯周病は歯周病原細菌の感染によって引き起こされ、機械的なプラークの除去に加えて抗菌薬の投与も治療として行われる。しかし、薬剤耐性菌の問題から、既存の抗菌薬に代わる歯周病予防・治療薬の開発が必要とされている。これまでに、陽イオンチャネルであるTRPA1チャネルのアゴニストのひとつで、シナモンの主成分であるCinnamaldehydeが、一部の細菌に対する抗菌活性・抗炎症作用を示すことが報告されている。 本研究の目的は、Cinnamaldehydeについて、歯周病原細菌に対する抗菌活性や抗炎症作用を明らかとし、新規の歯周病治療薬開発に資することである。 H30年度は代表的な歯周病原細菌P. gingivalis、F. nucleatumに対するCinnamaldehydeによる抗菌活性を評価した。また、バイオフィルム形成阻害作用および成熟バイオフィルムに対する除去効果を検討した。 R1年度においては、上記の抗菌活性に加え、Cinnamaldehydeの抗炎症作用について検討を進めた。ヒト単球系細胞を用い、歯周病原細菌由来LPS刺激に誘導される炎症性サイトカイン産生に対する抑制効果を検討した。その結果、Cinnamaldehydeによる抗炎症作用が明らかとなった。また、その作用にはTRPA1チャネルが関与している可能性が示された。 R2年度においては、歯周病モデルマウスを用いたCinnamaldehydeの歯槽骨吸収抑制効果を明らかとした。以上の結果より,新規の歯周病医薬としてのCinnamaldehyde応用の可能性が示唆された。
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