我々は,HMGB1が炎症のコントロールおよび免疫細胞の遊走を促進することによって,抜歯後の骨治癒を促進する作用があると考え,研究を行なっている。 HMGB1の機能を阻害する抗HMGB1抗体が創傷治癒を抑制するという仮説を立て,in vivoでの検討を行なった。その結果,抜歯モデルマウスに抗HMGB1抗体を投与 した先行研究において,炎症強度を測定するために分子イメージングを用いて解析した結果,抗HMGB1抗体を投与した群では,抜歯後1日目,3日目,5日目そして 7日目全ての時期の炎症は抑制されていた。一方,コントロール抗体投与群では,抜歯後3日目をピークに炎症が増強してその後減弱した。すなわち,抜歯窩周囲 組織の歯肉上皮細胞および炎症性細胞から分泌されるHMGB1が抜歯後の初期炎症および炎症細胞の浸潤に深く関わっていたことを明らかとした。その結果,抜歯 後に歯肉上皮細胞や炎症性細胞から分泌されるHMGB1がマクロファージや血管内皮細胞などを遊走促進し,血管新生の促進,骨のリモデリングの破骨細胞および 骨芽細胞に深く関わり骨新生を制御していたことを明らかとした。 したがって,HMGB1が誘導する初期炎症を上手くコントロールすることができるならば,生体内に存在する幹細胞を局所に誘導することによる新たな再生医療 につながるのではと考えた。今後は,脛骨損傷モデルおよび抜歯モデルマウスを作製してリコンビナントHMGB1タンパクを用いて組織再生を検討する予定である。
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