歯科用顕微鏡やコーンビームCT(CBCT)が導入された現在の歯科医療においても盲目的治療とならざるを得ない治療対象がある。代表的な例として、根尖部の破折や側枝といった微細構造があり、これら先端機器を使用しても観察不可能である。現在、市販されている歯科用内視鏡も複数存在するが、分解能は低く臨床使用に耐えない。また、観察できたとしても微細構造の位置を三次元的に把握することは不可能である。本研究では、観察対象を異なる角度から撮影した2種類の内視鏡画像の視差を利用することで観察対象の形状を計測しライブで三次元的なデジタル立体構造を再現する双眼の超小型内視鏡システムを開発することを最終目標としている。 今年度は前年度に引き続き内視鏡システムの試作を行った。内視鏡の画像伝送機構として、画像伝送用ファイバであるイメージファイバに、屈折率分布型レンズという円筒形のレンズを紫外線硬化型接着剤を使用して先端に接着した。製作した内視鏡プローブには、これまでの研究活動で開発したレンズ付きアダプター(特許第6593785号)を介して歯科用顕微鏡に付属しているカメラで動画撮影および画像取得を行った。観察対象としては格子状にライン・ペア(LP)が描記されたテストターゲットを使用し、結果として、10-35 LP/mm のパターンが観察可能であった。これまでに、内視鏡プローブと口腔内カメラとの接続には既に成功しており、歯科用顕微鏡にも接続できることが確認できた。これらの成果は歯科用内視鏡による根管内診断を普及させるための第一歩となる。双眼内視鏡システムについても現状で材料の選定が終了しており、それぞれの材料の光軸を合わせるために試作を重ねている。今後は内視鏡システムの各種イメージングデバイスとの接続による歯科における内視鏡診断の普及を目指すと共に、双眼内視鏡の製作による根管内の三次元的診断法を確立する。
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