研究課題/領域番号 |
18K17059
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中村 卓 松本歯科大学, 歯学部, 助手 (50756393)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HAEC / serum amyloid A (SAA) / 細胞培養 / 老化 |
研究実績の概要 |
平成30年度初旬に、若齢および高齢のヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)に対しSAA(2µ g/ml)を添加し,10日および20日間の長期間継代培養を行った。そして老化関連遺伝子(p21,p53,p16)発現,およびタンパク発現をreal‐timePCR法にて確認し,SAA非添加群と老化関連遺伝子の発現量の比較を行った。すなわち,従来より報告されている老化細胞から炎症性の因子が放出されるという定説とは逆に、炎症性の刺激により血管内皮細胞が老化細胞化するかどうかを検討した。 実験の結果、若齢および高齢のHAECいずれにおいてもSAA添加培養群においてタンパク発現には優位な差を認めたが、老化関連遺伝子については有意な差は認められなかった。 歯周炎病変部で産生されたIL-6を介して産生されるSAAにより,血管内皮細胞が刺激され,SAA受容体のTLR2の発現が上昇することにより若年者・高齢者共に各接着因子のmRNA発現が上昇し,動脈壁へのマクロファージの浸潤から動脈硬化症が進行することがわかったが、老化に関しては再度実験系の見直しが必要となった。 現在は新規に購入した細胞をSAA添加群および非添加群とし培養し、老化関連遺伝子(p21,p53,p16)発現,およびタンパク発現を検討中である。 そのため関連遺伝子に対するshRNAの作製および、HAECに対してshRNAを導入した場合のSAA誘導性老化関連遺伝子マーカーの発現抑制効果の確認も達成していない状況である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2年前より保有していたHAECsを使用し、SAA(25μg/ml)添加群および非添加群の2群とし,それぞれ10日間の細胞培養を行った後に回収しTotal-RNAを抽出した。まずreal-time PCR法にて接着因子(ICAM1,VCAM1)の発現を検討した。しかしGAPDHに比較して増幅せず,細胞劣化が問題であると推察されたため、LONZA社より新規に購入しなおした。再度、新規購入した細胞で同じ実験を行ったが,以前と同程度の増幅が得られず、原因としてプライマーに問題があると考え、TAKARABAIO社およびThermo Fisher社より接着因子プライマーを購入することとした。 使用する細胞の決定や、プライマーの設計に難儀したため、必要以上に時間を費やしてしまった。 現在は新規に購入した細胞をSAA添加群および非添加群とし培養し、老化関連遺伝子(p21,p53,p16)発現,およびタンパク発現を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
本来なら平成30年度末までに,発現老化関連遺伝子に対するsh(small hairpin)RNAレンチウィルスを外注製作(ライフテクノ ロジー株式会社)を行い,HAECに感染後、老化因子の発現抑制を比較、検討。そして、HAECに対してshRNAを導入した場合のSAA誘導性老化関連遺伝子マーカーの発現抑制効果を確認するまでが平成30年度の目標であった。 しかし研究が大幅に遅れている為、いまだレンチウイルスの作製はできていない。 また平成31年度では、In vivoにおいて、ApoE欠損マウスに対しそのレンチウィルスを感染させ、その後3ヶ月飼育し、大動脈血管内皮細胞での老化関連マーカーの発現、および動脈硬化悪化所見である脂肪沈着に対する抑制効果を比較、検討する予定であった。 レンチウイルスの作製期間、マウスの飼育期間を考慮し、平成31年度中に実験を終了させるために、実験期間を見直し、無駄のない効率の良い研究を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が遅れており、細胞やプライマーを次年度に購入する必要があるため。
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