研究課題
骨補填剤の主な目的はスペースメイキングであり、再生を促す重要な要素である。これまでにも様々な骨補填材が歯周組織再生治療・インプラント治療に利用されているが、いまだに最適な骨補填材の発見には至っていない。そこで本研究課題では再生に関わる因子を活かすための骨補填材、という新しい視点からのアプローチとして、従来の顆粒状の骨補填材とは異なる形状を駆使し、理想的な時期に骨への置換を誘導し、その作用機序を解明することを目的として実験を行った。本年度ではウシ脱灰皮質骨と歯周組織再生治療に使用されるエナメルマトリックスデリバティブを液状にした成長因子を併用することで、組織学的にインプラント周囲の骨再生、特にインプラントと骨結合に有効であること、一方で新生骨形成は単独使用の群と統計学的な有意な差を認めないことが分かった。そこで、成長因子の効果が期待できなかった理由として成長因子が入り込む構造ではないのかと考え、ウシ脱灰皮質骨のミクロ・ナノ構造についてSEM画像解析を行っている。次に、マクロ構造を応用(孔径300μm)した骨補填材料の長期使用による効果を大型動物実験にて組織学的に評価した。関心領域において、大部分が新生骨に置換され、約6%骨補填材の残存を認めた。以上から、本実験で使用した骨補填材は長期に安定して使用できる材料であること、一方で完全な骨への置換にはさらに経過が必要であることが示唆された。そこでミクロ構造を比較することが必要であると考え、①焼成温度を変更する②化学的処理を行うことで、骨補填材のミクロ構造がどのように変化するか調べる予定である。また歯周組織再生で使用される細胞増殖因子を併用することで、骨への置換率が変化するかを比較する実験を予定している。
4: 遅れている
本研究では、適切な期間で骨へ完全に置換されるための骨補填材と細胞増殖因子や抗菌薬などの薬物との併用ならびに骨補填材の3次元的構造の違いによる骨再生への有効性を明らかにすることを目的に実験を行っているが、これまでの結果から適切な期間での完全な骨への置換は認められなかった。今後、骨類似または薬物徐放に有効なナノ構造を有する骨補填剤の開発を行っていく予定であるが、適切な構造が未だに不明であるため、さらなる実験が必要であると考えている。
骨類似のナノ構造を基盤としたβ-TCP顆粒を凝集させ、3次元的に異なる多孔性管腔構造を有する骨補填材の開発を試みる。これまでの研究で、同一材料でも幾何学的構造を変化させることによって組織分化・成長・吸着に影響を与えることが報告されているため、従来の骨補填剤をもとに、3次元的に異なる構造にした際の有効性について細胞実験モデル・動物実験モデルで明らかにし,得られた結果を取りまとめ, 成果の発表を行う.
一時的に研究施設の利用が中止されたため、予定していた実験を全て中止した。細胞実験モデル・動物実験モデルの実験を再度に当たって、その準備のため細胞培養や動物実験の購入やそれに関する消耗品の購入を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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