研究課題/領域番号 |
18K17063
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 友美 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (00807589)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯根膜 / オートファジー / 酸化ストレス / 活性酸素種 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
歯根膜は歯周組織において、外部からの侵害刺激を遮断する生体バリアーの一つとして重要な役割を担っている。そのため歯根膜細胞は、種々の環境ストレスに適応した生体システムを個々の細胞レベルで具備するものと考えられる。近年、オートファジーが、酵母から哺乳類細胞における真核細胞において細胞自律な環境適応システムとして極めて重要であることが明らかとなっている。しかしながら、オートファジーが、歯周病の病態形成や歯周組織の恒常性維持に果たす役割については、未だ不明である。そこで本研究では、酸化ストレス応答機構に焦点を当て、歯根膜オートファジーの生理的役割を一細胞レベルで解明することを目標とした。その為に、平成30年度はヒト歯根膜細胞のオートファジーが、活性酸素種(ROS)代謝に及ぼす影響について検討した。 まず、ヒト歯根膜細胞における、オートファジー誘導剤あるいは阻害剤存在下でのROS蓄積量の変動を検討した。次に、細胞内ROS蓄積のメカニズムを検討するため、細胞内の最大のROS生成の場であるミトコンドリアについて解析を行った。オートファジー阻害によるミトコンドリアへの影響を検討するため、ミトコンドリアを染色し共焦点顕微鏡を用いて解析した。また透過型電子顕微鏡を用いて、オートファゴソームにトラップされたと認識される、二重膜に被覆されたミトコンドリアの微細構造物の検討を行った。さらに、ミトコンドリア由来ROSを特異的に検出することで、オートファジーの誘導あるいは阻害条件下での、ヒト歯根膜細胞内ROSの変動を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、オートファジーが、ヒト歯根膜細胞の酸化ストレス応答においていかなる役割を果たすかを、in vitro細胞イメージングならびに定量的解析を用いて解明した。 オートファジー阻害剤としてE-64dとペプスタチンAを、オートファジー誘導剤としてラパマイシンを用い、ヒト歯根膜細胞のオートファジー活性の変化が細胞内ROS量に与える影響を、共焦点顕微鏡を用いた解析ならびに、マイクロプレートリーダーを用いた定量解析を行うことで検討した。さらに、オートファジー阻害下でのミトコンドリアの形態変化を、共焦点顕微鏡を用いて解析した。また、透過型電子顕微鏡を用いることで微細な形態変化の詳細な検討を行った結果、オートファジー阻害下では、異常な形態のミトコンドリアが増加することが明らかとなった。また、オートファジー阻害下ではミトコンドリア由来ROSが増加することが、共焦点顕微鏡による解析ならびに、マイクロプレートリーダーを用いた定量解析によって明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度の研究課題を継続するとともに、蛍光プローブを用いて、オートファジー活性の定量化と、従来困難であった基底レベルのオートファジーの評価を行う。これにより、様々な化学刺激、炎症性サイトカイン、高グルコース刺激などの歯周病病態を模した侵害刺激が歯根膜オートファジーに及ぼす影響を解析する。さらに、ダメージミトコンドリアのマイトファジーによる分解、排除の生体ダイナミクスを詳細に検討するため、pHにより蛍光特性が変化し、リソソーム内でも分解されない新規蛍光プローブをヒト歯根膜細胞に導入し、安定発現株を樹立することで一細胞レベルの解析に当たる予定である。
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